短編 | ナノ
死神の話


シニガミは大きな鎌を引きずりながら目的地を目指します。
ザリザリザリとギャリギャリギャリと、鎌と地面がこすれる音がうるさくても目指します。

道の脇に痩せっぽちで白い、今にも死にそうな子猫がいました。
子猫はシニガミを見て細い声で鳴きます。
シニガミは静かに子猫の心臓に鎌を突き刺しました。
子猫は泣き止みました。
シニガミに子猫の声は切なすぎたのです。

深夜、電車のホームに立つ少女がいました。
アナウンスでは貨物列車が来ることを知らせています。
少女は緊張した顔で足を出したり引っ込め足りしています。
シニガミは素早く鎌で少女の首を狩りました。
少女はゆっくりと落ちて貨物列車とご対面しました。
シニガミは死ぬか生きるかで悩む人が大嫌いだからです。

戦場の真ん中に片腕のない兵士がいました。
泥で汚れた頬を涙が伝っていきます。
シニガミはそのまま通りすぎました。
遠くに彼らの仲間が見えたから。
そして何よりシニガミは死ぬことを覚悟した人が大嫌いだったからです。

ある山の中腹に白い着物を着た女がいました。
手には数珠を握りお札を構え周りを絶え間無く睨みつけています。
シニガミは逃げました。
自分が死ぬのは嫌だからです。

シニガミは目的地に着きました。
そこは真っ白な部屋に真っ白な家具しかない部屋でした。
ベットの上には一人の青年が寝ています。
シニガミは鎌を振り上げました。
しかし青年は目を開いて笑いました。
シニガミは鎌を振り上げたまま固まりました。
なぜなら青年はシニガミを見ているからです。
青年は静かに笑いながらシニガミに手を伸ばしてきます。
シニガミは鎌を握りしめると静かに、鎌を振り下ろしました。
青年は伸ばしたときと同じくらい静かに手を下ろします。
それきり動かなくなりました。
シニガミは自分が見える人間が1番恐いのです。

そしてシニガミはまた目的地を目指して歩き出しました。


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