あれから二ヶ月程過ぎたある日の事。
その日はお祭りがある日で、私は行かないつもりだったのだが、兄に誘われ着いていく事にした(彼が来ると聞いたら行かない訳にはいかない)
私は兄の提案で浴衣を着ていく事になった。
母に着付けをしてもらって、いざ出陣。

待ち合わせ場所は彼の家だった。
彼の家・・・と焦る気持ちだったが、中には入らないと聞いてがっかりした。
玄関のチャイムを押すとき、凄く緊張した。震える指で恐る恐る押すとピンポーンという、間抜けな音が返ってきた。
しばらくして彼の声が聞こえると心臓の鼓動が激しく動き出した。
それはもう、隣にいる兄に聞こえるのではないかというほどに。
変ではないか、とか、似合ってるかな、とか、年相応の、思春期の、恋する乙女な感情が頭をよぎった。
玄関を開ける音と同時に深く息を吸った。

玄関を開けて驚いた。彼女がいた事よりも、浴衣を着ていた事に。
黒地に赤い蝶があしらわれている浴衣は、彼女をより綺麗にさせていた。

「・・・及川」
「どっちも及川だよ」
「・・・及川兄」

どうして妹がここに。
言おうとしてやめた。なまえと行くのが嫌な訳じゃない。ただ、兄弟揃って整った顔立ちなもんだから、オレが少し居ずらいだけ。周りの視線が痛いだけ。

「ごめんなさい・・・やっぱり私」
「悪い!別に嫌な訳じゃねーよ。ただ及川が・・・」
「どっちの?」
「てめーに決まってんだろ!」

あいつの言葉にイライラして頭を掻く。
なまえを見ると今にも泣き出しそうな顔をしていて焦った。

「あー、ごめんな?一緒に行こうな」
「だって、良かったねーなまえ」

上機嫌でなまえの頭を撫でる及川にイラっとしたが、なまえも嬉しそうだったのでやめた。

「じゃあまー、行くか」
「れっつごー!!」
「お兄ちゃんうるさい」
「ひどっ」

賑やかな祭りになりそうだ。

彼が玄関から出てきて嫌そうな顔をして泣きたくなった。
でも一緒に行こうという声が聞こえただけで涙は引っ込んだ。
嬉しい。
その感情で心が満たされた。

楽しい祭りになりそうだ。



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