彼女の鼻を指先で撫でた 月島


例えば明日世界が終わるなら。

君は僕にそう問いかけたことがあった。何がしたい?その質問に対して僕は確か、何もしない。そう言った気がする。
世界が終わっても終わらなくても、僕たちに拒否権は無いわけだし。終わるからってテストの勉強しないで明日が来ちゃったら、それこそ終わりでしょ。だから、そんなこと言ってないで勉強しなよ。
軽くあしらうと、君は少し寂しそうな顔をして、気づいた時には笑っていた。
それもそうだね。私たちには明日があるもんね。
笑顔で軽く手を振り君と別れた。





君が事故に遭ったのは、その一時間後だった。





あの時、どうして気づかなかったんだろう。今でも後悔している。どうして、君を引き留めなかったのか。こんな天邪鬼を直して、素直に言えばよかった。


君に会いたいと。


僕の願いはそれだけだ。君に会いたい。もし神様がいるなら、叶えてほしい。代償は何でも構わない。声でも体でも心臓でも、何でも構わないから、どうか会わせてほしい。しかし僕の願いは聞き入れられることは無かった。

仕方がないか。

強行手段を使って僕は君に会いに行くことにした。
この手紙が届く頃、僕はそっちに行っている筈だ。これは、君の親御さんに頼んで棺に入れて貰う。ちゃんと許可も貰ってるから。
僕がそっちに行ったら、たぶん泣き虫の君のことだから泣くんだろうね。
どうしてと怒るかもしれない。でも、これは僕の我儘だから、君が悲しんだりする必要はないから。


最期になるけど、
僕は、君のことをしてるから。
それだけは覚えておいて。




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