ついいじめちゃう二口と保護者() 

丁度うとうとしている時だった。

「みょうじ」
「ひっ!」
意識が朦朧としているときにいきなり肩を叩かれたので変な声が出た。叩いた張本人は爆笑して、何だ今の声と騒いでいる。何しにここにきたんですか。
「何か暇そうだったから来ただけ」
「…なんでわたしなんですか」
「たまたま目に入ったから」
それ不良とかが言う台詞ですよね。
喉まで出かかった言葉を飲み込む。言ったら絶対何か言い返されるだろう。
「なあ、何か面白いこと言えよ」
「何でですか」
「暇だから」
「じゃああっち行っててください」
「つまんねぇからこっち来たんだよ」
「こっちもつまんないですよ」
「あっちよりマシ」
もう言い返すのも疲れてきて壁に寄りかかる。日向くんが影山くんに叩かれていた瞬間を見た。痛そう。
「なあ、こっち見ろよ」
「何でですか」
「別に理由はない」
「なら嫌です」
「何でだよ」
「理由がないからです」
また睡魔が襲ってきた。瞼が重くて、でも流石に二口さんの前で寝るのは失礼だからと必死に耐える。ごしごしと目を擦ると急に頭を引っ張られた。
「わっ……ふ、二口さん!?」
「お前眠いんだろ?寝てればいいじゃん」
「いや、失礼かなと思って。…あの、なんで、頭、」
「別に失礼じゃないだろ、少なくとも俺は思わねえし。肩貸してやるから寝てろ」
肩貸して頂いたら逆に寝れません。
心臓がこれでもか、というほど速く動いている。顔が赤くなるのはもう仕方がない。その前に髪の毛いじるのやめて下さい。
「お前の髪の毛柔らかいな」
「!!」
もう駄目です、二口さん。わたしの心臓はパンクします。
彼を突き飛ばしてわたしも距離を取る。何だよと不満そうな顔をしているがそれどころではない。あんなの誰にもやられたことなんて無いし、ましてや耳元で言われるなんて。
真っ赤な顔のわたしを見て、何を思ったのか彼はぐっと距離を縮めてきて。
「お前、面白いな」
わたしの腕を掴んで引き寄せ、
「おい」
ようとした所で声がして、掴まれていた手は離された。ほっとして声の主を見ようと後ろを見ると。
「げっ…」
「岩泉さん。あれ月島くんも?」
「あれって何。僕がここにいちゃだめなの」
「そういう意味じゃないんだけど」
「じゃ俺帰るから」
騒がしいと思ったのか、二口さんは腰を上げた。後ろ姿を見てほっと息を吐くとくるりとこちらを振り返った。エスパーですか。
そしてずんずん歩いてきて、
にやりと笑って、
耳元で、

「みょうじって可愛いな」


しばらく顔を上げられなかったのは言うまでもない。


 



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