必然 | ナノ


2.突然

廊下には窓があった。
どうしてあの教室には窓が無かったのだろう。

考えていても仕方が無いか。

廊下の奥の方を見てみたが、真っ暗で何も見えない。
しかし窓から差し込んでくる夕日が、電気の付いていない薄暗い廊下に差し込んでいて酷く不気味だった。
どうしてここだけ。

反対側の廊下も見てみたが、先は暗闇で何も見えなかった。

ホラゲフラグかな、これ。

仕方なくわたしは歩き出した。

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しばらく歩いていたが、何も起きることはなかった。
しかし不思議なことに、歩いても歩いても先は見えない、かといって周りが暗くなることはなかった。
やっぱりホラゲかな。
行けども行けども廊下、窓、教室。
見慣れた景色にいい加減飽きてきた。
あと50歩歩いて何も起きなかったら叫ぼうと決めて心の中で数えようとした瞬間。

「うわああ!」

突然、男子の叫び声と何かが倒れる音。そしてよくわからない奇声が聞こえた。
それはわたしのすぐ隣にある教室から聞こえていて―。

「逃げるぞ!」

先程とは違う男子の声。そして何人かの足音。
わたしは恐怖で動けなくなっていた。

ガラっとドアを開ける音。見ると、ドアを開けたのは目つきの悪い背の高い男子だった。

目つき悪しさん(仮)はわたしを見ると目を見開いて固まった。

「ちょっと王様!邪魔!」

鋭い声と共に目つき悪しさんより背が高い、メガネをかけた男子が目つき悪しさんを蹴り飛ばした。

「わっ」

わたしが思わず声を上げると、メガネさん(仮)も目を見開いた。
でもそれは一瞬で、彼はわたしに「逃げれば」とだけ言うと目つき悪しさんを置いて走り出した。
後から、明るい髪をした男子と、その子より背が高いそばかすとアホ毛が特徴的な男子が続けざまに出てきた。
二人ともわたしを見て驚いた顔をしていた。

わたしの顔、そんなに変だろうか。

開いていたドアから教室を覗き込んで、一瞬で理解した。

さっきの叫び声と奇声の訳を。

彼らが逃げ出した、

その訳を。


教室の中に、

おそらく人だったモノが、

赤い目を煌めかせて、

此方を、

じっと、

見つめていた。

 

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