必然 | ナノ


1.動揺

目を覚ますと見知らぬ教室に、わたしは居た。
いや、正しくは椅子に座って眠っていたらしい。
身体が同じ姿勢でいたために強ばっていて、とりあえず伸びをする。
机の中を漁ってみた。

中には何も入っていなかった。

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椅子から立ち上がり、辺りをよく見回してみた。
黒板がある。今日の日付は…。
やけに見えにくいなと思ったら、ここは一番後ろの席だった。
しかも真ん中の列の。
わたしは所謂“ちび”の部類に所属するので、前の席の人が、155cmを超えた時点で
わたしの視界から黒板が消える。
なんという悲劇だろう。

黒板は新学期さながらの綺麗さで、チョークも真新しい物だった。
うちのクラスの男子が見たら落書きするだろうな、これ。
ふと見ると、教卓に花が飾ってあった。
アネモネだ。
アネモネの花言葉は、
「嫉妬の為の、無実の犠牲…」
まさか、と思いながら視線を逸らした。

もう一度教室内を見回してみた。同時に、何かが足りないような、あの、言葉にできない感情が全身を駆け巡った。
何が足りない?なにが、
結論は思っていたよりもすぐにでた。

窓が、無い。

窓が無いということは、即ち。

「出られ、ない」

呟いて慄然とした。
冗談じゃない。

今になって恐怖を覚えると全身に鳥肌が立った。

「大丈夫」

わたしは自分に言い聞かせて教室から飛び出した。

 

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