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25.少女の憂鬱

"死"なんて、考えたことも無かった。


わたしにとっては生きていることは当然だった。
それは生きる動物にとっても当たり前のことなのだ。

何時かは死ぬのだとわかっていても、今を生きるのに精一杯でそんな先のことまでわからない。
今を生きているのは、紛れもない事実なのだから。


"死"とは虚無である。
"死"とは魂が解き放たれる事である。
"死"とは生まれ変わる事である。
"死"とは動物の心臓が止まった事である。
"死"とは生きる事を止めた事である。

"死"とは、



こんなに"死"があるのに、どれも正解ではないと云う。
こんなに"死"があるのに、誰も答えを知らないと云う。
"死"の答えが知りたいというのに、
誰も、





死にたくないと云う。




死にたくないのに、絶対死にたくないのに、
心の何処かでは別にいいや、と思っている自分がいる。

こんな現実、受け入れたくない。
夢なら覚めてと、何度願ったことか。
頬を何度叩いても、この世界は終わらない。


この世界から、わたしを助け出して。



わたしはまだ、







「……しにたく、ないよ…」







涙が零れ落ちた。



一つ、頬を伝うと後から後から溢れ出す。
止めようと思って下を向くと、瞼を押さえていた指の隙間から雫が落ちて床に染みを作った。






ふと温かいものに包まれた。






「…みょうじさん」
「つ、きしま、くん」
「大丈夫。死なせない」







絶対に君を、死なせはしない。

 

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