▼ 23.靄然
「はぁ!?なんだよこれ…」
「死ねっていうこと?ははっ、どんだけー」
わたしたちはゆっくり走るスピードを緩めた。
"それ"を目の前にしても、不思議と恐怖は湧かなかった。
立ち止まり、月島くんに下ろして貰って隣に立った。
「…俺、まだ死にたくなかったな」
「俺も。二口と青根、失礼なことしないといいけど」
「…みんな、大丈夫だよな。怪我とか、してないよな」
「菅原さんって、やっぱり優しいですね。こんないい先輩の後輩になれて羨ましいです」
「ありがとうみょうじさん」
ふにゃりと力なく菅原さんは笑った。
つられてわたしも笑った。
「ええー、俺は?いい先輩でしょ?」
「わかりません」
「ひどい!」
「…怖くないんですか皆さんは!?死にたくないんじゃないですか!?」
「…まあ、それが普通だろうな」
「うん。そりゃあ死にたくないけどさ」
及川さんは言った。
これ、見たら。
もう終わるでしょ。
わたしたちは今、世界の終わりを見ている。
救いの無い崩壊。希望の無い崩壊。
手を伸ばせばその手ごと消えてしまうだろう。
そのどうしようもない虚無に涙が出そうになる。
止められない。
食い止めることは出来ない。
誰も助けてはくれない。
だって、
目の前には何もない暗闇が広がり、
だんだんとその闇を大きくしていた。
何だか雲行きがあやしくなって参りました。私の予想通りです(震え声)
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