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21.果然

「わー、それは大変だったね。でも、及川さんがついてるからもう大丈夫だよ」
「え、あ。はい」
「何その顔。そんなに信用出来ない?」
「少しだけ」
「はっきり言うねー」
「月島も大変だったなー」
「まあ」
「…あの、それより早くここから出た方がいいんじゃないですか?」
「おお!頭いいねプリンくん」
「プリン…」

わたしたちは間一髪及川さんに助けられ、暗闇から出ることは出来なかったものの、男の子を撒く事に成功した。
すると暗闇からぞろぞろと教室にはいなかった人たちが出てきて危うく悲鳴を上げそうになった。

どうやらこの暗闇は自分の意思でどうにもなるらしい。
例えば、ここから出られないんだと思っていれば出られないが、絶対に出られると思えば出られる、そういう暗闇なのだと。
要するに恐怖みたいな?
及川さんはにこやかにそう言うと、出よっか、と呟いた。すると暗闇はじわじわと上に昇っていき、廊下にわたしたちは立っていた。

「え!?ちょっと待てよ及川!俺たちそんなの聞いてないけど!」
「だって爽やか君には言ってないもーん」
「…いや、俺たちも聞いてないです」
「ごめーん。及川さん、すっかり忘れてた」

彼はてへっと頭を拳で軽く叩いた。

***

近くの教室へ隠れて、自己紹介を軽く済ませたあと、金田一くんがふと呟いた。

「ここ、何階ですかね?」
「わからないけど、とりあえず皆がいる所に行こう!二口が何やらかすかわからないし」
「ノヤも何するかわかんないしな」

茂庭さんと菅原さんが時に溜め息を吐いた。
どこの学校も問題児はいるものなのですね。

「じゃあ下に行ってみよっか。なまえちゃんが覚えてるとこがあったら言ってね?」
「あ、はい。でも忘れっぽいのであんまり信用しない方がいいです…」
「あ、やっぱり?そういう顔してるもんねー」
「…月島くんて、いい性格してるよね」
「ありがとう」
「はい、そこまで。じゃあ行こっか」

菅原さんの言葉ではっと口をつぐんだ。本当に月島くんていい性格していると思う。

教室から出てプレートを確認しようとしたが無かった。これではここが何階なのかわからないではないか。
溜め息を吐いて及川さんたちの後へ続く。

「す、菅原さん」
「ん?」
「えっと、どうして暗闇にいたですか?」
「ああ、それは」
「及川さんが説明しよう!」
「あ、はい」
「俺と金田一が化物に追われてたら、そこの茂庭くんと爽やかくんに出会いました。皆で一緒に図書室まで逃げ切れましたが、誰かが本を触るとあら不思議!暗闇に落ちてしまいました」
「…誰かって、及川さんですよね」
「わあ、よくわかったね」

…つまり本を触って暗闇に落ちたという訳か。そういえば、わたしも黄ばんだ本を触ったっけ。
身体のあちこちを触ったが、どうやら無くしてしまったらしい。
もっと調べてみたかったのに。

「ここの階は違う?」
「えーっと。…わかりません」
「まあ探してみるか」

ここが何階かはわからないが、わたしたちは教室を探し歩くことにした。

ただ、本、というキーワードが気になる。
ただ単に暗闇に落ちるだけなのか、他に何か起こるのか。
今考えても仕方がないか、と教室へ足を踏み入れた。

 

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