▼ 15.颯然
状況が状況なので全く眠れない。
天井を見つめて心臓の鼓動の数を数える。一回、二回、三回…だんだん気持ち悪くなってきたので寝返りをうった。
月島くんと目が合った。
「…何」
「なんでもないです…」
「あっそ」
彼は黒板に視線を戻した。隣ではツッキーツッキーと山口くんが騒いでいて、月島くんにうるさい山口と言われてしゅんとしていた。
ああ、眠れない。
はぁー、と長い息を吐いてからごろっと転がりうつ伏せになった。よく考えてみるとここは教室で、学校で、ということはトイレ…という考えに至り慌てて起き上がった。
「どうした?」
「あ、何でもないです」
流石にトイレに行った後の上履きのままだからなんてとてもじゃないが言えない。
急に起き上がったので頭がぐわんぐわんと揺れる。
「大丈夫か?」
心配そうに岩泉さんが声をかけた。
わたしは大丈夫です、と一言言って揺れが収まるのを待った。
「ていうか探索班、戻ってきませんね」
「ああ」
「もし来なかったらどうしますか?」
「それも考えておかないとな…」
国見さんと岩泉さんの話を聞きながらこれからどうしようかと考えた。
もし出られなかったらここで暮らすしかないのだろうか。食料とか無いな…。
…食料?
「あ、あの」
「なんだ?」
「えっと、岩泉さんはここに来てからお腹空きました?」
「は?」
「あ、変なこと聞いてスイマセン」
「…みょうじさんって図太い神経してるね。僕、凄く尊敬するよ」
「ち、違うよ!そういう意味じゃなくて!」
「俺は全然ねぇな。お前らは?」
「俺もないです」
「俺もです。ツッキーもないよね?」
「まあ」
お腹が空かないという事はここから早く出られるのだろう。脱出系の小説などで、食料があれば長い時間−下手すると何ヵ月ぐらい−ここにいなければならないと読んだことがある。だから少なくとも日付が変わる前には出られるだろう。
ただ、わたしの推測が正しければの話だが。
その事を皆さんに話すと難しい顔をして黙った。
「…みょうじの推測が当たればいいけどな」
「はい…」
少し部屋の空気が重くなってしまった。
プツッ、キーンコーンカーンコーン。
スピーカーからチャイムが鳴り出した。
わたしは驚いて近くにいた山口くんのジャージの袖を掴んだ。
このチャイムが何を意味するのか、わたしには分からないけれど、
少なくとも嫌な事が起こるという事は確かだろう。
わたし達は音が鳴り止んでもスピーカーから目を離せないでいた。
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