▼ 13.平然
「俺たちは最初、研磨と夜久とも一緒にいたんだが化物に追いかけられてはぐれたんだ。で、隠れてた所でお前らに会った」
「俺たちもそんな感じだな。落ちた時は及川と金田一、花巻といた。ただ、化物に追いかけられて給食室辺りではぐれた」
「俺たちもそんな感じっす。スガさんと田中さんと木下さんといたんすけどはぐれました」
みんなはぐれてしまったのか。
大丈夫だろうか。
「…ねえ、アンタ名前なんてゆーの?」
ハーフさんに突然問われて焦った。
と同時に英語とか外国語で聞かれなくて安心した。
「あ、えっと、みょうじなまえです」
「ふーん。俺は灰羽リエーフ!よろしく!」
「あ、はい。よろしくお願いします」
背が高いから先輩だろうか。しかしこの部屋にいる人達は皆身長が高い。バレー部だから当たり前か。
「みょうじさんか。俺は黒尾鉄朗。因みに何年生?」
「あ、一年です」
「え!小学生かと思った!」
灰羽さんの言葉にカチンときたが、ここで怒るのも馬鹿らしいと心の中に留めた。
「何だー、俺と同い年じゃん」
「!!」
「じゃあ国見とも同い年だな。ほら挨拶しろ」
「…国見英です」
「(同い年がこんなに…!しかも身長高い)」
どうして神様は人に平等に物を与えないのだろう。そのせいで損する人だっているだろうに。
「自己紹介が済んだ所で提案なんだが、ここは待機班と探索班に分けて行動しないか?」
「別にいいと思うぜ」
「何か冒険っぽい!!」
「遊びに来てるんじゃないんだから…」
「満場一致だな」
ニヤリと笑った黒尾さんはどこかのドラマの悪役に似ていた。
「3年が二人いることだし、どっちかが探索で余った方が待機っつーことで」
「待機と探索は交換していくのか?」
「その方が平等だからいいな」
「はいはいはい!俺探索がいいです!」
「お前は待機だろ」
「は!?何でだよ!」
「チビちゃんビビリだし」
「日向ビビリなのかーぷぷっ」
「うおい!!俺はビビリじゃ」
「どーでもいーから早く決めるぞー」
男子高校生って楽しそうだな。
言い争う彼らを遠目に見ていると岩泉さんが隣に腰を下ろした。
「なんか烏野って、バカっぽいな。言っちゃ悪いけど」
「あはは、わたしも同感です」
苦笑混じりに言うと岩泉さんはわたしの頭に手を置いた。
「ま、無理すんなよ」
「…はい。ありがとうございます」
やっと言えた感謝の気持ち。
少し照れくさくて膝に顔を埋めた。
岩泉さんは、わたしの頭を2回程ぽんぽんと優しく叩くと黒尾さんの方へ行った。
「待機組は岩泉くんがリーダーだ」
「…くん付けはやめろ。何か気持ち悪い」
「了解。岩泉がリーダー。探索組は俺がリーダーな。どっちがいいか手ぇ挙げ…」
「はいはいはいはい!俺!俺探索したいです!」
「はい。じゃー、日向決定」
「じゃあ俺も!」
「リエーフ決定」
「ツッキーはどうするの?」
「僕は待ってた方がいい。探索とか面倒臭いし」
「はいじゃーツッキーは探索でー」
「は?」
「(うわ…明らかに不服ですって顔してる)」
「面倒臭いって言う人はー探索しようかー」
「…僕ちょっと遠慮しておきます。だって、日向くんを手懐けられるのは影山くんしかいないと思うので」
「(うわ…人を犠牲に…)」
「あ゙?んだと?」
「俺は影山なんかに手懐けられねーぞ!」
「おい日向ボゲエ、なんかってなんだ」
「ということで僕は行きませんから」
「(手懐けてるなー)」
「じゃあこのメンバーていいか?大人数だとかえって見つかりやすいからな」
「ストップウォッチ持ってるよな」
「ああ。ちゃんと30分になってる」
「じゃあ気を付けろよ」
「おー。準備はいいかお前ら!」
「「「おー!」」」
「行くぞ!」
ドアを颯爽と開けて踏み出していく探索組さん。
危険なことに会わないといいが。
がんばれ、と心の中で呟いた。
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