▼ 12.全然
「みょうじさん、話聞いてる?」
「はい…スイマセン」
「別に僕に謝っせもしょうがないデショ。てゆうか、何か悪いことしたの?」
「…勝手に出ようとした挙げ句…自殺行為に及んでしまい、申し訳ございませんでした…」
「だから、僕に謝ってもねぇ」
あれから数分後、わたしは月島くんにお説教されていた。
ネチネチと小言を言う月島くんに姑かと言いたくなる。
「…ツ、ツッキー、も、もういいと思うよ?ほら、みょうじさんも反省してるし」
「うるさい山口」
「ごめんツッキー!」
月島くん無双ですか。
あっさり論破された山口くんに心の中で謝罪した。
ごめんなさい、山口くん。
「月島、もういいだろ。音駒の人と青城の人たちもいるんだし」
「…はぁ、王様の言うことなら、しょうがないな」
影山くんが神様に見えた。
ありがとうございます、今度何か奢ります。
「やっと俺たちに気づいてくれたか。ていうかツッキー、意外とS?」
「やめて下さい」
いい加減足が痺れてしまったので、足を崩して周りを見た。
同じ部屋にいたのは、赤いジャージの人たちと白いジャージの人たちだった。
赤いジャージの人は寝癖さんと凄く背の高い人(ハーフだろうか)。白いジャージの人は眠そうな人と岩泉さんだった。
及川さんがいなかったことに安心したのは秘密だ。
「…ねえ、山口くん」
「なあに?」
「どうしてここにいるの?みんなは?」
「ああ、えっと…」
「みょうじさんは爆睡してたからわかんないのか」
嘲るように月島くんが言った。
少しむっとすると顔に出ていたようでハーフさん(?)が吹き出した。
「あのね、みょうじさんが気を失った後、急に体育館の床が抜けてみんな落ちちゃったんだ」
「え!?」
「みょうじさんはツッ−」
「うるさい山口」
「ごめんツッキー!」
そうだったんだ。
体育館の床が抜けるなんて。
「…なあ、そろそろ情報交換でもしねぇか?」
岩泉さんの言葉にみんな黙った。
というか、みんな一緒にいた訳ではないのか。
「あれ?及川サンはいないんすか?」
嬉しそうな、不安そうな複雑な顔をしている影山くん。
「ああ。さっきはぐれた。まああいつバカだけど足は速いから逃げ切れるだろ」
すこし表情が曇る岩泉さん。
クソ川クソ川とは言っているが、やはり心配なのだろう。
「だっ大丈夫ですよ!及川さんは…あの、その、凄い?と思いますよ…」
岩泉さんを励まそうとしたものの、わたしは及川さんの事を何も知らなかった。辿々しい言葉を紡いだが、恥ずかしくなってうつむいた。
「…ありがとな」
「!!」
岩泉さんはわたしの頭をくしゃりと撫でた。
こんな言葉でも元気づけられただろうか。
「取り合えず、体育館から落ちた後から話すか」
寝癖さんの言葉に、わたし達は丸くなって改めて座り直した。
(今いるのは、国見くんと岩泉さんとリエーフくんと黒尾さんとツッキーと山口くんと影山くんと日向くんです。
ただ日向くんが空気)
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