必然 | ナノ


10.駭然

「俺たちが目を覚ましたのは2階だった。確か3年1組だな。烏野と違って俺たちは全員揃ってた。で、研磨曰くこういう時は体育館が安全だっつーことで体育館を探してたら烏野と会った訳だ」

寝癖さんが一息で言った。
肺活量が凄いですね。

「烏野と俺たちで体育館を探してたら…」
「俺らに会った訳ね」
「ああ」

要するに、寝癖さん一行さんが進むと烏野さんと会って、そしたら及川さん一行と会ったという事だろう。

「…終わったけど、どうするの?」

研磨さんが言うと皆さんは黙ってしまった。
思わず隣の山口くんと苦笑する。
…一体これからどうするのだろう。

ドンッ!!

沈黙を破るようにドアの方から何かを叩きつけるような音がした。
見ると_。

「ひっ」

さっき追いかけられた化物が窓に張り付いていた。

「ギ、イ、イ、イ」

金属で何を擦るような音が聞こえた。これが“あれ”の声だと分かるまで時間はいらなかった。

ドンッ、ドンッ、ドンッ。

規則正しいリズムで“それ”はドアを叩き始めた。
心臓の鼓動よりも遅いテンポ。それはわたしに不快感を与えて_。

するとわたしは突然目眩に襲われた。
ぐわんぐわんと目の前が歪んでいく。
床も、窓も、みんなの顔も。

意識が遠のいていく。

閉じる瞼に焼き付いていたのは、あの化物の真っ赤な目だった。

 

- ナノ -