必然 | ナノ


7.忽然

チャイムが鳴り終わると辺りは静寂に包まれた。
誰一人として口を開こうとしない。

ー筈だった。

「あはは、怖いねー。映画みたい」

及川さんはKYだった。

「これドッキリかな?うわ、俺ってば有名ー」
「クソ川!空気読め!」
「いったあ!彼女にもぶたれた事ないのに!」
「別れただろ!」
「酷い!気にしてるのに!!」

全然気にしているようには見えない。
そこにトゲトゲさんのパンチが炸裂。

「あー、悪かったな。その、こいつが変なことして」
「あ、いえ。大丈夫?です。たぶん」

たぶん、というのは、隣のわたしを引っ張ってくれた方が、物凄く機嫌悪そうにしているからで。

「たぶんって…ああ」

トゲトゲさんも彼を見て納得したようだ。
及川さんが復活しそうになったので、またトゲトゲさんは殴った。

「あ、あの!ありがとうございました」
「いや、別に…」
「岩ちゃん、そこは女の子なんだから、名前で呼んであげな…グフォ」

無言で及川さんの頭を殴った、岩ちゃんさん(?)は、時々こちらを見たりそっぽを向いたりしていたがいきなり頭を掻くとこちらに向き直った。

「岩泉、岩泉一」

頭の後ろに手を置いて、彼−岩泉さんは言った。

「あ、みょうじなまえです」
「へぇーなまえちゃんっていうんだ」

岩泉さんが口を開こうとすると及川さんが遮った

「可愛い名前だね。良い名前を付けてくれたお父さんたちに−」
「すいません、周り見てもらってもいいですか」

及川さんを遮る形で月島くんが黒い笑顔で言った。
面と向かって言われていないのに怖いと思うのはわたしだけだろうか。

「じゃあ取り合えず、ミーティングでもするか」
「そうだな、情報交換でもしとくか」
「・・・オレも行かなきゃだめ?」
「行くに決まってんだろクソ川!」

ぞろぞろと各高校の人達が中心に集まって行く。わたしはどうすればいいのか分からなくてオロオロしていた。
ここは行くべきなのか、しかしわたしは部外者だから待っていた方がいいのか。

「みょうじさん、行くよ」

月島くんに腕を引かれた。
わたしなんかが、いいのだろうか。
そんな思いに気付いたかのように、彼は顔をしかめた。

「自分なんか、とか思ってるかもしれないケド、そんなの誰も気にしないカラ」

わたしと目を合わせようとしてはくれないが、口調は優しかった。ありがとう、と彼に聞こえる程度の声で呟くと彼が笑ったような気がした。
皆の元へ行くために、わたしは歩を進めた。

 

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