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4.当然

彼の走るペースは落ちることがなかった。
運動部なのかな、と一人考えていると。

「影山ー!こっちだー!」

教室で叫び声を上げた人とは違う人の声が前の方から聞こえてきた。
曖昧なのは、わたしが目を瞑っているせいだ。

「ハイッ!!」

大きな声で返事をすると、目付き悪しさんー影山さんはスピードをあげた。

「しっかり掴まってろよ!」

言うの遅っ!

わたしのツッコミも空しく、世界陸上の選手並みの速さで彼は走り出した。
そして急に曲がった。
急に曲がるなら何か一言声を掛けて欲しかった。
わたしが目を瞑っているのが悪いのだろうけど。

「うぇ!?女!?」
「おい影山!その子誰だ紹介しろ!」
「今はいいから後でね!」

目を瞑っていて誰が話しているのかわからないが、内容はわたしの事だろう。

わたしは酷く赤面した。

ちなみに、影山さんや周りの人達は走りながら話している。
なんて器用な。

「あっち行けばすぐ体育館だから、そのまま突っ走れ!!」

その声と共に、周りの人達の走るスピードが上がった。
そういえば影山さん、疲れないのかな。

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化け物の気配はいつの間にかしなくなっていた。
もう、大丈夫じゃないですか?
と声を掛けようとすると、

「あれが体育館だ!」

影山さんを呼んだ声と同じ声が聞こえた。(ややこしいな)
ガラッと扉が開くような音、そしてわたしを再び浮遊感が襲った。

「いたっ!」

思いきり腰を打ってしまった。

影山さん、扱い酷すぎる

おもむろに起き上がると、

人、人、人。


人の射すような視線がわたしを突き刺していた。


 

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