「ねぇーちゃんは、オレがこわくねぇのか?」 「こーんなちびっ子を怖がる要素は何処にもない!」 「ちびっこいうなってばよ!」 「私より背が高くなったら言うのやめる」 4代目様と同じ金髪で笑った顔がクシナ様そっくりなのに、何故里の人は誰も気が付かないんだろう。 同僚の子とナルトくんを見かけた時に、ふとそう思った。誰もが、(まだ)無力で(まだ)弱いナルトくんを目の敵にする。腰元にも及ばない小さな背を怖がり、追い立てる。この里の人達は意外と馬鹿なのか。そう思った夜もある。でも、きっと里の皆は怖いんだ。突然現れた九尾が住処や友人、平穏エトセトラエトセトラ………奪ったものが多すぎた。だから、皆、あんな幼い子供に怯えている。 「こーんなちびっ子、怖くなんてないよ」 「………ねぇーちゃん」 「ん?」 「オレがいったいなにしたっていうんだってばさ」 どうして誰も、この幼い子供の顔を見てあげられないんだろう。 親がいない。兄弟もいない。親の知り合いもいない。優しくしてくれる近所のおじさんも、お菓子をおまけしてくれるおばちゃんもいない。いない、いない、いない。いないものだらけ。誰もこの子に手を差し伸べたりはしない。なぜ。私には分からない。私の思考回路では理解できない事に里の人は怯えている。 彼らは思わないのか。 「私の知る限り、君は悪戯っ子なおチビさん。だから、他の人がどうして君を怖がるのかは良く知らない」 「………」 「でも、でもね。君は皆が怯える程、強くもない」 このまま酷い扱いをし続けたとして。 この子の心が憎しみで溢れ、己に味合わせた苦しみを何倍にしてでも返してやろう、と考えたとして。 「彼らは目が悪いんだ」 「めが?」 「そう。だから、君がこんなちっぽけな存在だと知らない」 もし、その報復が成された時、命乞いでもするつもりなのか、と。 「そう!そうなんだってばさ!オレってば気がついちゃったんだ!」 「自分がちっぽけなことに?」 「うん!」 恐怖という色眼鏡と、里の中に居れば絶対安心だという信仰。 それがこの子を恐れる彼らと恐れることをしない私との違いだ。 里の中にいれば安心?何を馬鹿なことを。現に九尾に襲撃された。戦争だって、本当に収まったのかも分からない。仮面さんみたいな危険因子なんて、まだまだ世界のどこかにはいる。 「じゃあ、私と同じだね」 私の考え方は、多分、この子の教育には良くない。 打算的だし、この子が復讐に走る大前提だから。でも、それが、多分、私なのだと思う。死にたがりじゃない。でも、現実に死のうと思った。でも、一度、死んだと思っていた期間は中々複雑な心境にしてくれた。 無駄に長生きはしたくない。でも、そう簡単に、あっさりと、死にたくはないんだ。 だってこの命は子猫から貰ったものだから。 29/30 |