.VIVID WORLD
杜山さんという着物が良く似合う女の子が仲間に加わって数日。私はちょっと不穏な空気を教室内に感じている。
「………奥村くん、奥村くん」
「スキヤキ!?」
「…………起きなさい」
原因は言わずもがなである。奥村先生の双子の兄だか弟だか分からないが、まぁ、とりあえず奥村くん。彼は何時でもどこでも居眠りするのだ。こんな面白い授業を受けないなんてもったいない!という事を他にも思っている子が居るようで、その子が日に日に不機嫌になっていくのだ。ちょっと怖い。あのトサカとかさ、なんでそんな金メッシュ入れてるの。
ー悪魔学の授業
「"腐の王"アスタロスの眷属で最下級の悪魔の名前は?奥村!」
「えっ、あー………えー………と見たことないもので その」
コールタールだよ、奥村くん。最下級だから理事長の結界の中にも存在出来るんだって。こんな大きな範囲に結界張れる理事長凄いね。
「魍魎コールタールだ!そこらに浮いてるだろ!」
コールタールは漢字に直すと魍魎ってなるのは奥が深い。魑魅魍魎にも使われる言葉で山・水・木・石などの精気から生じて、人をばかすという怪物のこと。すだまっていう別名もあるけど、まぁそういうこと。つまりはアミニズム信仰が根付いている日本にも昔からいる存在だし、受け入れられているのだが。この教科書によると悪魔の頂点はサタンという魔神らしいのだが、日本の妖怪伝説ではぬらりひょんが魑魅魍魎の主、妖としての最上位は竜なのだが、そこんとこはどうなんだろうか。やっぱり海外の基準にならってランク分けしたら上の方なのかな。八候王の中では誰の支配下になるんだろうか。
「………下、上下!」
「はいっ!?」
「お前までぼっーとするな!」
「ひぇっ!?すいません!!」
「緑男(グリーマン)の性質はなんだ、上下」
緑男(グリーマン)とは、八候王の末席に位置する"地の王"アマイモンの眷属で人が作った泥土人形などに憑依した悪魔に、苔や植物が生えたものの事をさす。主に下級〜中級レベルで比較的大人しいタイプだ。日向ぼっこが好きだなんて可愛いよね。ちなみに植物じゃなくて雪だと雪男(スノーマン)という。けして、奥村先生じゃないけどね。
「季節に関係なく植物を生やすことが可能で日向ぼっこをさせると喜びます」
「よろしい!しっかり集中して受けるんだぞ」
「すいませんでした」
隣りのねむくんからの、ちゃんと受けやがれバカが、っていう声が聞こえた気がする。ぞわりと鳥肌が立った。怖いよ………怒んないで………ねむくん。
『ちゃんと受けやがれバカが』
「はい………」
ついに声に出して言われてしまった。