面倒事が、7つ




集会後
潮田サンは喉が乾いたようでドリンクを買いに行った。
確かに、山の上にもう一度登るのは疲れるし、喉が乾く。
ウチも買おうと思い、彼の後を追った。

「あ」

自販機の前で本校舎の2人に潮田サンが絡まれている。
ほんと、あの人、良く絡まれるよな。
そんなことをボーッと考えつつ、足を踏み出した。

「蒼井?」
「ん?」

妙に聞き覚えのある声が名前を読んだ。
赤羽サン以外、メカと呼ぶので何だか新鮮だ。
声の方へ振り返ると如何にも優等生と言う感じの男子学生が1人。

「理事長Jr.」
「浅野学秀だ!」
「何か用すか、浅野サン」

どうやら、理事長Jr.はお気に召さないらしい。
目を吊り上げて否定する姿はなんとも滑稽だ。
しかし、何故彼はウチに声を掛けたのだろうか。
正直言って、誰だこの人状態なのだが。

「君があのエンドのE組に行ったと聞いて驚いたんだ」
「そすか」
「聞くところによると、君は協調性が余りにも無いからエンドのE組に落とされたんだろ?」
「………………。」
「今からでも遅くない理事長に、」
「理事長に頼み込んで、元のクラスへ戻れと?」
「そうだ。君に、あのクラスは似合わない」

何を根拠に言ってくるんだろうか。
ウチがあのクラスに馴染めていないのは事実だ。
だが、それはいずれ訪れる別れの時の為に敢えて、距離を取っている事もまた事実。
今の彼等はあくまで一般人だ。
コチラの世界に巻き込むわけにはいかない。

「似合うとか、似合わないとか、どーでもいいす。ウチは、落ちるべきだから落ちた、ただそれだけす」

「E組はE組らしく下向いて生きてろよ」
「もう人生積んでんだからさ。」

潮田サンに絡んでいた2人が言う。
下を向くかは、おいておいても、人生を積んでいることは事実だ。
ただし、ウチにおいてだが。

「ほら、彼等もああ言ってるす」
「君は彼とは違う!」
「違わないすよ。ウチも、潮田サンも、浅野サンも。同じ学校に通う生徒す」

「殺すぞ!!」
「殺そうとしたことなんてないくせに」

殺す、と言う言葉を追うようにピリッとした殺気が潮田サンから溢れた。
横目で確認すると、笑顔の潮田サン。
まだまだ、ボス達に比べたら弱いけど、確かな殺意を感じるソレに自然と口角が上がる。
そんなウチを見て浅野サンが困惑したように眉根を寄せる。

「平和は好きだけど、退屈は嫌いす。貴方の言う、似合う場所は此処にはないす。」
「?」
「言葉に責任を持つことの出来ない人の居る場所は、ウチには似合わないすよ。殺す、だなんて簡単に言える退屈何てウチに必要ないすから」

クスリ、と笑って踵を返す。
潮田サンに絡んでいた2人の脇を通り過ぎ、彼の後を追って山に入っていく。
久々に恭弥サンに会いに行こう。
そして、少し風紀委員の仕事を手伝うことにしよう。

【平和は好きだけど、退屈は嫌い】

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