面倒事が、3つ



「赤羽サン」

授業終わり、何処に居るのかわからない赤羽サンを探す。
本来なら、授業が終わるとすぐ帰り、正一と、それからスパナでSkypeをする予定だった。
本音を言うと、赤羽サンには、否、あのクラスとは関わりたくない。
ウチの平和な日常を壊す要因だから。
ウチは、学生時代ぐらい平和に暮らしたい。
どうせ、高校を卒業したらボスのいるボンゴレの元に行くのだ。
平和から遠のくこと間違いなし。

「蒼井さん?」
「?」

頭上から声。
この声は、赤羽サンのものだ。

「約束は果たしましたので、それでは」
「待ってよー」
「嫌すよ」
「えー」

クルリと踵を返し、外を目指す。
その後ろからは赤羽サンがついてくる。
校門が近くなり、ますます鬱陶しい。
何なんだ。

「……………何か用すか?」
「うん」

悪びれることなく赤羽サンが笑う。
ああいうあくどい笑みを浮かべている時は、誰であろうと近づくな。
と、ボンゴレの暗黙の了解が頭をよぎる。

「で?」
「何すか」
「蒼井さんってさー、何者?」
「は?」

まるで下からのぞき込むように距離を近づける彼に混乱。
何だ、この人。
どことなく狂気を孕んだ赤い瞳が、あの人と重なった。
短い黒髪に、激情を孕んだ紅い瞳。
顔の半分を覆う火傷の痕。
そして、全てを破壊する怒りの炎。
彼もまた、我等がボスの仲間だ。

「あ」

赤羽サン越しに潮田サンが絡まれているのを発見。
そう言えば、ボスも炎真サンも良く絡まれていたな。
赤羽サンが潮田サンを助けた。
何だかんだ言って赤羽サンは優しい。
途中で合流した潮田サンも入れ3人で下校。
何故に。




駅に着いた。
改札を通り、階段を上って駅のホームへ行く。
電車が来ると共に、突風が吹いた。
生暖かいソレに、思わず眉根を寄せる。

「オレさあ、嬉しいんだ」

本当に嬉しそうに赤羽サンが笑った。
この笑い方をウチは知っている。
狂気に取り憑かれた、歪んだ喜び。

「ちゃんとした先生を殺せるなんてさ。前の先生は自分で勝手に死んじゃったから」

腕を鳥肌が覆う。
彼に対する恐怖は、ウチの中で今も残っている。
本音を見せない微笑みと真実ですら隠してしまう言葉。
全てを塗りつぶそうとする、機械的な白。
ウチは、やはり、彼を受け容れることが出来ない。

【狂気を孕んだ赤い瞳】

prev next