面倒事が、10と7つ



修学旅行も終わり、やっと何時もの日常が訪れようとした休日。
ピロリン、とふいになった携帯に首を傾げつつも画面を開く。

[明日からソラのクラスに転校する]

スパナからのメールにはある意味衝撃的事実。
え、やった。

[住処は何処すか?]
[正一の家に留学生で来てる]

らしい。
あの二人が一緒なら一安心だろう。
明日、スパナと一緒に並盛に行くことにしよう。

「明日が楽しみすね」

1人呟いた。



翌日。
教室に入ると端の席に何か居た。
黒い長方形の立体。
フロントに画面。
そして、横の溝。
これは………

「おはようございます、今日E組に転校してきました自律思考固定砲台と申します」
「解体したい!」
「え!?」
「メカ!?」

自動で画面が付いた。
そこに映るのは可愛いらしい女子。
挨拶の為に顔を映し出し、再びブラックアウト。
おぉ、素晴らしい。
授業の開始を知らせるチャイムが鳴り、殺せんせー、イリーナサン、烏間サンが教室に入ってきた。

「皆もう知っていると思うが転校生を紹介する。ノルウェーから来た自律思考固定砲台さんとスパナくんだ」

お、おう。
どうやら真面目な話らしい。
スパナも自律固定砲台サンも。
殺せんせーが笑う。

「おまえが笑うな、言っておくが彼女はAIと顔を持ちれっきとした生徒として登録されている。あの場所からずっと銃口をお前に向けるが彼女に反撃ができない」

なるほど、生徒には手を出さないという契約を逆手に取って利用したのか。
確かに生身の人間が殺るより、よっぽど効率がいいかもしれない。
が、兵器をクラスに送り込んで授業が成り立つと思っているのだろうか。

「いいでしょう自律思考固定砲台さん、あなたをE組に歓迎します!もちろん、スパナくんもです!!」
「よろしく」



1時間目。
右隣に赤羽サン、左隣にスパナ。
という、なかなか微妙な組み合わせが揃った。
教壇に立つ殺せんせーが後ろを向いた瞬間。
自律固定砲台サンがギラリ、と光った。

「おぉ!解体したい!!」
「「(メカと同じこと言ってる〜!!)」」

一瞬にして展開される重火器。
あの狭い幅にあれほどの兵器を収納するとは素晴らしい。
だけど、あの程度なら、

「ウチのモスカの方が凄い」
「ウチも同感す」

あの程度なら殺せんせーはおろか、ボスにも負ける。
なんだ、つまらない。
殺せんせーはマッハ20で避け、黒板にバチバチ、とBB弾が跳ね返る。
生徒の安全性を確保してない時点で二流のメカニックだ。

「授業中の発砲は禁止ですよ」
「以後気を付けます殺せんせー、続けて攻撃に移ります」

どうやら、言葉だけの反省のようで大きい音と共に自律固定砲台が再び光る。
眩しい。
光が収り、再び重火器を展開した自律固定砲台。
もはや、呼び捨てである。

「こりませんねぇ」

ストライプ柄の殺せんせー。
地味にムカつく顔だ。
殺せんせーの指が消えた、否、破壊されたところを見る限り学習能力がある模様。
隠し玉とは、また粋な技を使う。

「次の射的で0.001%未満の確率で、次の次は0.003%未満、卒業までに殺せる確率は90%以上。続けて攻撃に移ります」

はぁ、スパナと2人でため息を吐いた。

「2発の至近弾を目視で確認、見越し予測のため4門増設、続けて攻撃に移行します」



放課後。
結局、全ての授業で似たようなことになり呆れた。
環境に適応する能力が無い。
だから、二流のメカニックどまりなんだよ製作者。
顔を知らぬ製作者に罵倒する。

「転校初日からごめんす」
「何で、ソラが謝る?」
「自律固定砲台に代わってすよ」

そう言ってブラックアウトした自律固定砲台を指さす。
どうしようか。
明日、改造するか?

「おや、ちょうどいいところに」
「殺せんせー」
「何か用すか?」

お二人には是非、と言って続けた殺せんせーに久々に笑った気がする。


【二流のメカニック】




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