面倒事が、1つ

「メカニカルメカニック」

夢の中で呼ばれた名前。
重力を無視したすすき色の髪。
ヘタレで人一倍、仲間思い。
そんな彼は、夢の中で私を読んだ。
機械じかけ技術者、だなんて口説いよね。
なんて、思ってふと気づく。
ウチの今のあだ名は、メカだ。
あれ、じゃあ、ソレがそのまま長くなったとか?
夢の中の出来事が何処か他人事に思えなくて。
私は、並盛町に向かった。
そしたら、

「もしかして、お前、メカニカルメカニックか?」
「え」

足元から声がした。
視線をそちらに向けると1人の赤ん坊。
ボルサリーノを被って、黒いスーツを着た子供らしからぬ子供。
夢の中に出てきた、不思議な赤ん坊が居た。

「………君、あの赤ん坊?」
「そうだぞ。リボーンだ。よろしくな」
「ん」

ソレが数日前。

***

「今日からこのクラスの担任になったタコだ」

そう、紹介されたのは何故か服を着た喋る等身大のタコ。
なんだろ、凄く解体したい。

「突然だが、君たちにはコイツを暗殺してもらいたい。ちなみに、これは国家機密だ」

何だか面倒な説明を長々とご苦労様です。
パッと見、そうは見えないけど結局ガッシリしていて、ちょうどいい筋肉がついている。
うん、この人強い。

「……………というわけだ」
「なるほど、つまりウチらはそのタコを殺せばいいんすよね?」
「そうだ」
「面倒すね、ウチ、パース」

そう、面倒だ。
面倒ごとは、嫌いだ。
ただでさえ、将来はマフィアに関係するのだ。
学生の時くらい、気楽に過ごしたい。

「ヌフフ、蒼井さん」
「気持ち悪いす、近寄んないでもらえないすか」
「ヌフッ!?」

夢の中、もとい10年後の世界で会った南海果実頭の彼を連想させるような笑い。
やめてくれ、10年後があるってことはこのタコは死ぬ。
分かっているから、わざわざ関わる必要もない。
そう、自己完結して思考の海に沈む。

「 SISTEMA C.A.I. 」

瞬時武装換装システム。
ボンゴレ、我等がボスの右隣、隼人サンの武器。
10年後の私が開発した、匣兵器の1つらしい。
そもそも、匣兵器自体の開発に携わっていたらしい。
確かに、あの夢を見るまで組み立ていた構想の1つではあるけど。
まさか、実現するなんて思いもしなかった。
今度、アルコバレーノの1人、ダ・ヴィンチの再来とうたわれている彼の元を訪ねよう。
ついでに、正一とボス達の匣兵器を観察しよう。
そうしよう。

「…………ヵ、メカっ!」
「ん?」

思考の海に漂っていたら、突然肩を揺さぶられた。
揺さぶったのは茅野サン。
私の右隣の人。
そして、目の前にはタコを連れてきた男の人。
確か、名前は

「唐島サン」
「烏間だ」
「何か用すか?」
「受け取れ、もう君以外は受け取った」

目の前に出されているのは、緑色のナイフ。
それと、プラスチック製の拳銃とBB弾。
視線を周り向ける。
確かに、他の人は皆受け取っているようだ。

「何すか、これ」
「特殊加工をした武器だ。アイツにしか効かない」
「………その証拠は?」

こんな、玩具で暗殺しろというのか。
その意味を込めて皮肉る。
すると、そこに入ってきたのはタコ。
確かに、マッハ20は伊達じゃない。
めちゃくちゃ速い。

「ヌフフ、蒼井さん、私に攻撃してみなさい」
「そすね」

言うが早いか、緑のナイフを最小限の動きで振り上げる。
少し遅れて、ボトリと落ちるタコ足。
………………エグい。
しかも、ビクビクと痙攣してる。
もう一度言おう、エグい。

「にゅや!?」
「!?」

烏間サンが、凄く驚いている。
何すか。
殺れって言ったの、オタクじゃないすか。
ため息をついて、もう一度、今度は振り降ろした。
今度は、ナイフが掠る前にかわされた。

「メカ、凄いね!」
「…………別に普通すよ」
「(いや、普通、そんな簡単に攻撃しないから!)」

クラスの全員の意見が一致した瞬間だった。

【面倒事は、嫌いだ】

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