面倒事が、10と4つ




絶賛迷子なう。
頭に浮かんだ一言。
そういえば、ウチ、迷子体質だった。
ごめんす、磯貝サン。

「あれ?メカ?」
「あ、ども」
「もしかして、迷子?」

赤羽サンの言葉に頷く。
このニヤニヤした笑みは気に食わないが、とりあえず事実だ。
仕方が無い。

「メカって誰の班だっけ?」
「磯貝サンす」
「じゃあさ、見つかるまで一緒に回ろうよ」
「皆さんが良ければ、それで」

どんどん人気の無い所へ向かう。
祇園は一見様お断りが多いので人が来ない。
そして、見通しがよくない為、暗殺にはもってこいだとか。
下調べハンパないすね。
でも、アンタら一応、暗殺者の卵なんすから、付けてくる後ろの気配ぐらい分かるようにならなければ殺せんせーは殺せないすよ。

「ホントうってつけだ、なんでこんな拉致りやすい場所歩くかねぇ」
「はぁ」
「オレ等に何か用?お兄さん達、観光目的っぽくないけど?」
「男に用はねーよ、さっさと女置いておうち帰んな」

男の1人が喋り終えると同時に赤羽サンが動いた。
男の顎を押し、顔を掴んで近くにある電柱に叩きつける。
まぁ、この中では1番いい動きしてると思う。

「ほらね渚くん、目撃者がいなきゃケンカしたっt 「何、油断してるんすか!」」

赤羽サンの背後でオールバックとかいう髪型の男が鉄パイプを振り下ろす。
とっさに、赤羽サンに罵声を浴びせつつ庇ってしまった。
ウチも大概バカすね。
ゴッ、とい音と共にパイプが背骨に直撃する。
あーあ、この程度のヤツら、復讐者の掟がなかったらサクッと殺せるのに。
殴られた反動で地面に倒れこんだ。
間髪いれずに再びゴッ、と音がする。
痛む背を庇いつつ顔をあげれば赤羽サンが倒れていた。
ホント、使えないすね。
だから、ごっこ遊びは嫌いなんすよ。

「メカ!カルマくん!!」
「何、ボサっとしてるすか!さっさと逃げろ!!」
「ひゅ〜、キミかっこいーね。おい早く女さらえ」

ニヤニヤしながら口笛を吹き、ウチの髪を引っ張った。
ズキリ、と背骨に痛みが走る。
マズイな、ヒビいってるかも。

「っ!__ __ __ !!」
「うるせぇ!」
「!!」

とっさに名前を叫ぶも、背中を踏みつけられて意識を飛ばしてしまった。



「大丈夫、メカ?」
「こ、こ、は、?」
「分からない、さっきのヤツらに連れてこられたみたいで」

痛みで目が覚めた。
視界がグニャリ、と歪んでいて気持ち悪い。

「だ、じょ、ぶ、?」
「私たちは大丈夫、まだ、何もされてない」

良かった。
今の所は特に問題ないらしい。
まぁ、有るとすれば、ウチ自身だ。
度々、ボンゴレの保護下になるまでは1人で襲ってくるヤツらを相手していた。
相手もプロだ。
いくら記憶があると言え、中学生にはキツく、ボロボロになった。
しかも、まだ、完治していない背中。
そこに塩を塗るかのようにダメージを与えたせいで、今のウチは指一本動かせそうにない。
どうしたものか。

「起きたかお嬢さん。騒いでも誰も来ねぇし、ギャラリーが多い方がいいと思って今ツレに召集かけてる。それと記念撮影の準備もしてるからよ、楽しもうぜ台無しを」
「クソッたれ」

ぎゃはは、と下品に笑う男に呟く。
どうせイタリア語なんてわかるはずがない。
他力本願で嫌だが、少しでも時間をかせいで彼等が助けてくれるのを待つしかない。


【クソッたれ】


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