面倒事が、10と3つ




ある意味、衝撃的な再開を果たしたウチら。
まぁ、なんだかんだ言って適応能力の高いウチのクラスメイトはすぐ馴染んだ。

「まさか、一般人がメカの知り合いだったとはね」
「メカとは何処で知り合ったんですか?」
「え!?あ、と、うーん」
「ウチが並盛町に出掛けた時すよ」
「そうなんだ!」

困ったように視線を泳がすボス。
怪しいから辞めて欲しい。
しばらくして、お互いの自己紹介を終わらせた。

「ね、自販機でなんか飲み物買ってくるけど何飲みたい?」

そう言った茅野サン達。
車両を出るときに他校の学年とぶつかった。
オールバックで学ラン着た柄の悪い、まぁ、所謂不良だ。

「炎真サン達、シモンの皆さんは一緒じゃないんすね」
「炎真たちは京都で合流なんだ」
「そすか」
「うん」


到着後。
新幹線内では何事もなく京都に到着した。
今度はバスで宿まで向かう為、ボス達とはここでお別れである。

「じゃあね、ソラ」
「やっぱり、お土産買う」
「スパナがそう言うなら、ウチも2人にお土産買うす」

2人とは言わずもがな、正一とスパナだ。
そもそも、ボス達が京都旅行するのもスパナと正一が行くなら護衛ついでに行こう、とのこと。
いい息抜きになるのだろう。

「じゃあ、またね」
「はいす」

結局、新幹線の中だけしか一緒に居ることができなかった。
少し寂しく思いつつもクラスメイトの元へと戻る。


「今から枕を取りに先生は東京に戻ります」
「コレだけの荷物にまだ忘れ物あるんすか」

倉橋サンがナイフで切りにかかるがかわすだけの元気はあるようだ。

「どう?見つかった?」
「ううん」
「神崎さんは真面目ですね、独自に日程表をまとめていたとは感心です」

どうやら、神崎サンが自作の日程表をなくしたらしい。
殺せんせーが自作のしおりを取り出した。

「でもご安心を、先生手作りのしおりを持てば全て安心……」
「それ持ちたくないから各自で日程まとめてんだよ!!」

確かに重い。
だから、必要な内容は全て暗記した。
ボンゴレのメカニックとあればこの程度、余裕のハズ。

「でも確かにカバンに入れたんだけど………どっかで落としたのかな」



夜。

「メカ温泉行こー!」
「はいはい」

純日本な旅館の通路を駆け足で浴場へと向かう女子ズ。
元気すね。

「あ〜疲れが取れるねぇ」

身体や頭を洗い終えた女子ズが続々とお湯に浸かり始める中。
ウチは未だに体を覆うタオルを外せなかった。
体中に残る傷跡を見られたくない。
ただそれだけの理由。

「メカ、入らないのー?」
「やっぱり、後で入るす」
「だめに決まってるでしょ!」

と、まぁ、女子ズに取り押さえられて強制的に入浴。
よくよく考えたら自分も一応術師なのだし、幻術で隠せば言い訳で。

「キレイな肌ー!」
「そんな、仲間だと思ってたのに!?」
「メカって着痩せするタイプかー」
「この隠れ巨乳!!」

何だか居心地が悪くてすぐに上がった。
えー!?、と文句を言われたが知らない。
体の水気を取り、旅館の備え付けの浴衣を着る。
髪は長くて乾かすのが億劫で、何よりも早くこの場を去りたかったウチは適当にまとめてその場を後にした。
散歩でもしていればそのうち乾くだろうと思い、羽織を着て旅館の通路を歩く。
夜風に当たるためにロビーへと向かう。
開け放たれた窓からの風はとても気持ちよかった。

「はぁ」
「なーにため息吐いてるの?」

自然と、こぼれたため息に呆れたような声がかけられた。
そちらを向けば同じく浴衣に羽織姿の赤羽サン。
面倒な人に捕まった。

「丁度、退屈してたんだよね。ため息つくくらい暇ならさ、ちょっと付き合ってよ」

腕を掴まれ、引かれる。
ロビーにあるソファーに座らせられ、その隣に自身が座った。

「何かいつもと雰囲気違うね」
「…………」
「あ、髪の毛、まとめてるからか」

何か話しかけてくるが無言を決め込む。
答えなんて期待していなかったのか、言いたいことをペラペラと話す。
正直、鬱陶しい。
何でこの人はわざわざ作った距離を壊そうとするのか。
らしくはない、と思いつつ彼に対する苛立ちが増す。
だから、本当にらしくないけど

「いい加減にするす!なんなんすか、アンタ!!」
「何が?」

赤羽サンに八つ当たりしてしまった。
だけど、赤羽サンは余裕そうに笑って。
立ち上がったウチの袖を引いて再び座らせた。

「蒼井さん、ちゃんと痛いなら《痛い》って言わなきゃダメだよ」
「!?」
「蒼井さん、分かりずらいから、我慢してると誰も気付けないよ?オレ以外」

《痛い》か。
何時からか痛いだなんて言ってられないくらい、周りが恐ろしくなった。
恐怖を克服するには自分に強さが必要だった。
だから、死にものぐるいで強くなって。
それで。

「髪の毛結構濡れてるね」
「そのうち乾くす」
「ふーん」

ウチの言葉につまらなさそうな反応。
その直後、何やらあのリボーンサンみたいな悪どい笑み。
嫌な予感。

「いい事思いついた」

赤羽サンは上機嫌でそう呟くとソファーから立ち上がった。
どうやら、部屋に戻るつもりらしい。
そのまま部屋に戻れ。
そして、出来ることならもう関わるって来るな。

「俺が乾かしてあげるよ」
「は?」

いい事思いついた、というのはこの事すか。
相変わらずの悪どい笑み。
嫌な予感的中。

「男子部屋おいでよ」
「断るす」
「どーせ、女子と一緒に居るのが嫌なんでしょ?」

今は。
確かに、今は他の女子と一緒に居るのが辛い。
全てを見透かしたような、その赤い瞳が気に食わない。
が、少しぐらい乗ってやってもいいかなとも思う。
ただの気まぐれだが。
ぼーっとしながら赤羽サンの後について行いく。

「げ!」
「女子だ!」
「隠せ!」

大慌てで1枚の紙を隠す男子の皆様。
あの慌てぶり、大方、ランキングだろう。
なんの?って?
ソコは察しよう。

「カルマ、お前何考えてんだよ!」
「バレるとこだったじゃねーか!」
「って、あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

1人がウチをみて驚いたように叫んだ。

「何だよ…………」
「「ああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」

それにつられて、ようやく入ってきた女子が誰かを認識した彼ら。
驚きに目を見開いたまま、固まっている。
なんすか。

「メカ、カルマくんに連れてこられたの?」
「そうすよ。へるぷみー、というやつす」
「ごめん、全く分からない」
「お待たせー」

ドライヤーを片手に迫ってくる。
男子が息を飲んで、様子を見守る中。
大人しく正座をした。
もう、どうとにでもなれ。


暫くすると男子ズもこの状況に慣れたのか各々に過ごし始めた。
少し騒がしいがそこはご愛嬌、ということで。

「メカは好きな人いないの?」
「その話題が嫌でコッチに逃げてるんすけど」
「まぁ、いいじゃん。教えてよ」
「アンタはドライヤーに専念しろよ」

ウチの言葉に、確かに茅野達怖そう、と苦笑い。
あの女子ズの剣幕は怖い。
良かった理解者だ。
耳元のドライヤーの音が止んだ。
終わったようなのでとりあえず立ち上がる。

「ありがとうす」
「……………ホント、蒼井さんってこの手の事に鈍いよね」
「ハハハ………」

またもや、潮田サン苦笑い。
さて帰ろうかと襖に手を掛けようとした。

「「きゃあぁぁぁぁ!!」」

突然の女子ズの悲鳴。
何事かと思い、思いっきり襖を開け放つ。
すると、向こうから

「変態〜!」
「あっメカ!」
「逃げて!!」

女子に追いかけられる見覚えのある人。
何やってるんすか、この人。

「何、何事!?」
「メカのストーカーよ!!」
「断じて違う!!」
「何やってるんすか、アンタ」

とりあえず、赤羽サンからドライヤーを取りその額に向けて全力投球。
ガゴンッ、といういい音をたてて命中した。



「で?何の用すか、レヴィサン」
「会いたかったぞメカ!」
「いや、人の話聞けよアンタ」

とりあえず、男子の部屋に入った現状。
ちなみに、女子ズも居る。

「メカ、この人、本当に知り合い?」
「一応」
「そのわりには対応冷たいよね」

別のウチ以外のメンバーも似たか寄ったかの対応だからいいと思う。
この人、普段は真面目で面倒な性格だがXANXUSサン命のいい人だ。
そう、普段は。

「アンタ、酒飲んでるすね」
「メカ、相変わらず妖艶だばぁ!!」

とりあえず、殴った。
そう、ベルサン曰くむっつりスケベなレヴィサンはお酒が入るとウザイ、キモイ、ハゲろ。
の三拍子なのだ。
しかも、今のセリフで女子ズからの目線がヤバイ。

「「だめだめだめだめ!!!」」
「メカ、こんなの相手しちゃダメ!」
「そうだよ、調子乗るだけだよ!」

女子ズの言葉にそうだ、そうだと同意する男子ズ。
この人、こんなに目立って大丈夫なのだろうか。
少し、心配になってきた。
と、そこで突然、襖が勢い良く開いた。

「しししっ、メカはっけ〜ん」

またしても見覚えのある人。
この人達、何で京都に居るんだろうか。

【もう、どうとにでもなれ】


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