面倒事が、10と1つ





ある晴れた昼下がり。
他の人がザワザワ、と騒ぐ中、ウチは眠気のあまり机に突っ伏していた。

「おーい、メカ、起きてー!!」
「メーカー!!」
「なんすか」

耳元で叫ばれては流石に寝ていられず顔をあげる。
寝惚け眼を擦りつつ体を起こした。
ウチの睡眠を妨害したのは茅野サン、速水サン、というか女子の皆様。
なんすか、皆して。

「メカは修学旅行の班決まってる?」
「修学旅行、すか?」

頭がまだ覚醒せず話についていけない。
そんなウチに構わず、女子の皆様が騒ぎ出した。

「やっぱりメカはウチらの班だよ」
「いやいや、こっちでしょ」
「何かよくわかんないすけど、どうでもいいす」
「「良くない!!」」

ウチの言葉に息ピッタリの女子ズ。
え、なんすか。
フツーに怖い。

「メカってば何でそんなに無関心なの!?」
「興味ないすから」
「修学旅行なのに!?」

何だか可哀想な目で見られる。
何故故に。
来週から京都に修学旅行らしい。
まぁ、ただの修学旅行で済まないが。
京都か。
ボスや皆さんにお土産買わなきゃいけないすね。

「もう、勝手に決めてくださいす」
「皆、既にジャンケン大会始めてるよ」
「そすか」

本人抜きのジャンケン大会。
いいんすかね、ソレ。
どうやら、決まったようだ。
班員は、片岡サン、岡野サン、矢田サン、磯貝サン、木村サン、倉橋サン、前原サン。
メンバーが微妙に濃い。

「あのさメカ。一応連絡先教えてくれる?」
「………………」
「べ、別にやましい事は何も「いいすよ」」

磯貝サンに言われ、暫しの思考。
ウチ、簡単に連絡先教えていいんすかね。
だけど、何か磯貝サンが可哀想に思えたので、まぁいいかと許可した。

「じゃあ後でメール送るね」
「了解す」

メアドの書かれている紙を磯貝サンに渡す。
よくよく考えるとクラスの人に教えるのは初めてだ。
と、そこで殺せんせーのリュックが目に入る。
あの荷物を見る限り、生徒より楽しみにしている。
皆さん、なんやかんやで楽しみにしているらしい。



夜。

[近々、日本に行く]
[了解]
[正一に京都案内してもらってから行くから、お土産買う]
[ウチも修学旅行で京都行くから別にいい]
[分かった]

久々にスパナからのメールが来た。
内容はどうやら日本に来る、とのこと。
スパナは日本大好きなので日本に来ると必ず正一に京都を案内させる。
あの未来の記憶によって良い友が出来たと思う。
しばらくすると、またメールが来た。
誰かと思えば、磯貝サン。

[磯貝です。登録よろしく(∩´∀`@)⊃]
[了解]

何故か可愛い顔文字を使っている。
意外だ。



翌日。

「磯貝サンは顔文字使うんすね」
「あー、その、女の子だから味気ないメールはイヤかと思って……………気持ち悪かったよな」
「別にいいと思うすよ。ソレも個性すから」

ウチの答えに嬉しかったのか顔を綻ばせる磯貝サン。
爽やかに微笑むなこの人。

「メカ、私達にもメアド教えて!!」
「俺も!!」
「先生も!」
「磯貝サンに聞いてくださいす。教えるのメンドイ」

茅野サンや先生、その他の男子にも迫られた。
………………情報ばら撒くことになったな。
卒業したらメアドを変えよう。



「ドンマイ、磯貝」

前原サンが磯貝サンを励ましていたのはまた別の話。

【卒業したらメアドを変えよう】


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