出会いは偶然に2
「なし子は部活は何にするの?」
「やりたいの特になさそうだし、ラグビー部かな〜?」
「そっか、ならラグビー部の勧誘探しにいこ」
「あ、待って、先生に提出するプリントある」
「もー、じゃあ先いってるよ?」
「うん〜後で合流するねー」
この後八王子が彼に出会うだなんて思っても見なかった



「なし子!!手紙書いて!」
「はあ??」
とあるお昼休み八王子がなし子に可愛らしい便せんを差し出したと思えばそんなことを言い出した。
「最近お昼休みどっか行っちゃうと思ったら今度はそれ〜??」
「ごめんごめん、だけど絶対勧誘したい奴がいてさ」
「仕方ないな〜…で?相手はなんて名前?」
「赤山濯也くん。すげー体格いいんだ〜」
「赤山…くん?」

とりあえず便せんを受け取り八王子の指示通り文章を書いた。

「赤山くんって、やっぱりあの赤山くん…?」
目の前の下駄箱に書かれて居る名前とクラスは間違えなく入学式の時に助けてくれた赤山くんのものであろう。
だがしかしもしかしたら別人かもしれない。そっと手紙を入れて少し考えていたが
「すまない、靴を取りたいんだが」
「ご、ごめんなさ…ぁぁあ!!」
振り返れば当の本人がいてたまらず声を上げてしまった。
対して赤山は大声をあげたなし子に少し眉を寄せたが見知った顔でもあるのですぐ戻った。
「お前か、」
「あの時はありがとうございました!」
「あれは礼を言われるほどの事じゃない」
「でも助かりました…!!」
「そうか、」
で?何か用事か?と彼は尋ねてきたので
当初の目的を思い出しこのまま自分が居ても気まずいと気づき
「えっと、あの…!失礼しますー!!」
「あ、おい!…まったく、なんなん…」
下駄箱を開けた赤山は数秒固まりさっき走り去った女を思い出す。
「まさか…!」
中に入って居た手紙をひっ掴み校舎の影へと走っていった


「はーっ、はーっ、緊張した」
「お疲れ様〜はい、オレンジ」
「ありがとう〜、いやあまさかあの赤山くんか」
「なに?知り合い?」
「いや、入学式の時に助けてもらったというかなんというか」
「?…あ、赤山くん」
「マジか」
窓を覗けば下駄箱から走ってきたであろう赤山。周りに誰もいないのを確認して手紙を開ける
「ここからバレバレだぞ〜」
「ホントむーちゃんって勧誘となると性格悪いよね」
「うるさい」

「あ、むーちゃんからって気づいた」
「あーあ、手紙ぐしゃぐしゃ…」
「あ、破かれちゃ…!」
「あっぶな!2枚目気づいてくれた…!」
「どーするの〜?入ってくれそ?」
「手強いよね〜、でも諦めないよ!さ!部活いこ!」
「はーい。雲行き怪しいね…」
「雨降るかなー」




手紙は読んで断る決心が出来、早速八王子を探していたが今日に限って何処にもいない。部活をやっているのかと思いまず部室に行けばオモチャや菓子のゴミだらけ
呆れて返事は明日にしようと帰ろうとおもったらグラウンドに人影を見つけた。


「むーちゃんとりあえず後10本タックルしたら上がろー!雷鳴ってきた!」
「わかったー!」

雨に濡れながら練習を取り組む2人
八王子は動いて居るからずぶ濡れなのはわかるが
なし山に至ってはカッパを着ては居るがフードは取れて頭がずぶ濡れだ
「ラグビーは個人競技じゃないと言ったのはあいつじゃないか…」
だが、あんなに一生懸命な2人をみて心が動かされた。

気づいたら足元にあったボールを鷲掴んで
2人の元に近づいていた。

「おい」
「うわっ!!」
「せ、赤山くん…??わっ!」
ひどく間抜けな顔をする2人に呆れてとりあえずなし山に傘を持たせ学ランを羽織らせる
「持ってろ、ずぶ濡れだぞ」
「あり…がと?」
「えっと…、え?」
「…何をポカンとしてる…天才からのパスだぞ」
「ごめん…嘘ついた」
「…俺に球技のセンスなどないのは自分が1番分かって居る。」
「ははっ、」
「神高はそこまで強くもないしやる気のない先輩達ばかりだ。何故そこまで熱心になれる」
「俺だって足が速いわけでもないし、そんなに器用なタイプでもない。でも、運命って言うのかな偶々ラグビーと出会ってこんな俺でも認めてくれる居場所が見つかったんだ」

「だから、その感動を1人でも多くのやつに感じてほしかった」


「居場所…か、帰宅部だとそんなこと思う事ないだろうな」

「え?」

「俺にラグビーを教えてくれ、やるからには上手くなりたい」

その一言に八王子と顔を見合わせるなし山
たまらず2人は声を揃えて
「ようこそ!ラグビー部へ!」

「こちらこそ、よろしく頼む」

ここから始まった。ラグビー、今となっては些細なきっかけだったが入って正解だった。
そりゃあここまで来るには我慢と悔しさの連続だった。だがその度励ましてくれるチームメイト、支えてくれたなし子。
キャプテンとして最後まで引っ張りたい。
最後の夏が始まろうとしていた。


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bkm
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