星章学園

4月、春、花粉。

そして新学期。
うぉぉ、遂に最高学年じゃあ!
者共ひれ伏せぇとか調子に乗るわけでもなく
ぼーーーっと入学式を物見し真新しい制服に身を包んだキラッキラの1年生を目尻に特に特別な授業もないので部室の掃除へと向かう。

え?誰もいないのになぜ掃除するかって?
不思議なことに誰も使ってなくてもホコリはたまるんだよなぁ…。

円堂たちが転校してしまったあともこうして部室の整備は欠かさない。いくら学校側が金を出して良い設備の部室を作ろうともこの掘っ建て小屋の部室は何物にも変えられない。

そんな新学期を迎えてしばらく経った頃



『名前暇か?』
「第一声それやめてもらえる?」

早々久しぶりに電話での連絡をよこしてきた鬼道にテンションが上がって出れば第一声はそれだった。というより「?」は入っているがお前暇だよなって決めつけな言い方であった。
「暇ですけどなにかー」
『放課後星章にきてくれ』
「え?」

有無を言わせぬ鬼道の言葉に選択肢は「はい」か「もちろん!」しか残されておらず袴田さんの手料理を報酬として電車を乗り継ぎ態々やってきた。

「来たはいいけど…」
校門にはワラワラと帰宅する為に校舎から出てくる生徒たち雷門の制服を纏ったあたしは大勢の生徒からなんだなんだと奇妙な目で見られる。
ちょっとチキンハートにヒビが入りかけたその時
「名前せんぱーーーい!!」
「その可愛らしさ100%の声は春菜ちゃん!!」
バッと振り向けばブレザーに身を包んだ音無春菜がそこにいた。
「ひゃー!春菜ちゃんブレザー似合う!!めっっちゃ可愛い!!」
「照れちゃいますよぉ〜」
「ぁあ、可愛い、妹にしたい」
「春菜は俺の妹だ」
「鬼道!」

「んで?用っていうのは?」
「星章のサッカー部に新入部員が入ったんだが」
「うん?」
「厄介なことがあってなそれの手伝いを頼みたい」
「はーー、ビッチの絶対指導者の鬼道が手こずるってどんだけよ、明日槍降るな」
「せ、先輩ピッチですっ!それだといかがわしくなっちゃいます!」
「おっとごめん、噛んだ」
片手で頬を摘まれ口がタコになる。おっと、結構痛いぞ
「ピとビのどこに噛む要素があるんだ」
「ひょめんて」

素直に謝ればパッと離されスタスタと歩き始めてしまった。相変わらずツレないやつだ

「お兄ちゃんあぁではあるけど先輩に会うの楽しみにしてたんですよ!」
「フォローありがとうっっ」
なんて良い子なんだ!!

「星章サッカー部監督の久遠だ」
「素敵な帽子ですね、雷門の苗字名前です」
この人にはきっと冬っぺってあだ名な娘さんがいるに違いないと直感が伝えてくるが無視を決める。
サッカー部のミーティングルームに案内されたかと思ったらいきなり監督さんを紹介された。
因みに春菜ちゃんは資料整理と偵察があるから泣く泣くお別れを告げた…。
どういう状況。説明して!

「今、星章はある問題を抱えている」
頭を悩めていると以心伝心できたのか久遠監督さんが言葉を紡ぎ出した。

「問題…?」

なんだなんだと思考を巡らせていると鬼道が横に来て話し始めた。

「新入部員の1人がサッカーセンスは凄いんだが部活に顔は出さずワンマンプレイヤー…どうしたものかと思ってな」

「で?そのワンマンくんに部活に顔出させるようにして連携を教えると?」
「そうだ。サッカーは1人ではできない。連携から生み出されるプレーを覚えなければ1人では勝てない」

「鬼道らしい考え方だね、よし!手伝おう!…って言いたいけどまず何するの?」

「そこで俺たちの出番って訳だ」

聞き慣れた声が聞こえ振り返れば


「え!?源田に佐久間!?」
そこには帝国学園のお馴染みの2人がいた。

「2人がいるならあたしいらないじゃんよ…」
「いいや、お前の力が必要だ」
悪巧みしてる鬼道に耳を傾ければ、
鬼道の考えはそのワンマンくんはいつもサッカーコートの横をと思って帰るらしい。
そしてみんなが引き留めようとするもフェイントをかけられてのらりくらりとかわされてしまうみたいで、
それを狙って鬼道がまず足止めをし隙を狙ってあたしが取り抑え練習に参加させるとのこと。
佐久間と源田はあくまでも今回はゲストとしての登場をしてほしいらしい。
帝国の時もそうだったけど演出凝ってるなぁ

「…ん?力が必要って…それもしや物理では?」
「よくわかったな」
「ドレッド引きちぎる!!!」
鬼道に飛びかかろうとすると佐久間に羽交い締めされた。解せぬ
「落ち着け苗字!」
「だってぇ!」
佐久間に抑えられながらも尚も鬼道に向かおうとするあたしの目の前に源田が出てきた。
彼は屈んで目線を合わせてしかも手を握ってきた。なんか照れる。
「落ち着け名前、鬼道の言い方も悪かったかもしれないが、女子のお前に力でねじ伏せられたら男してのプライドがどうこうなると思ったんだろうだからといってお前を"女だから"という位置付けで利用してすまん」
「…源田が言うなら、」
源田の大きな手を緩やかに握り返す。


そんな2人を見て佐久間は口元が緩むのが隠せなかった。
「チョロいな」
「源田ナイスフォローだ」




「星章キャプテンの水神矢成龍です」

その後久遠監督さんに了承の元、綿密に打ち合わせをしてとりあえず星章キャプテンには粗方伝えようとことで今自己紹介の真っ只中である。
実に誠実そうで良い子そうである。
下まつ毛長いなぁ羨ましい。

「雷門元サッカー部員の苗字名前です」
「去年のFFで活躍は見てます!あと鬼道さんからお話はよく伺ってます!」
定型文の様な返しに思わず笑ってしまう。
「どうせゴリラとか、バスタータイプとか言ってるでしょ」
鬼道が席を外してるからとりあえずなんて言っているか聞けるチャンス!と思い話を振ってみる。

「いえ!えっと、考えてない様に見えて奥底が解らないやつで先頭を進んで自分を犠牲にしてまで引っ張ってくれる人だと聞いてます…!」

意外!それは、褒め言葉!!
出だしは貶しているこそも、なんだかむず痒い。

「水神矢くん話し盛ってない?本当に鬼道の口から出た言葉??」
「勿論です!」
うっわ眩しい。
とても良い笑顔で両手で握りこぶしを作り食い気味で寄ってきた
おぉ、整った顔が目の前にっ!と思っていたら両肩を背後から掴まれて引かれた。
「ちょっと近いぞ水神矢」
引いた犯人、源田は自分の方に引き寄せる。
表情は伺えないが声色は硬い
「あ、すみません、そんなつもりはっ!」
源田の指摘に顔を赤らめワタワタとしだす水神矢、クールに見えてすごく感情豊かで可愛いぞこの子。
「何をしているんだ」
そこでユニフォームに着替えた鬼道が入室してきた。
「あ、水神矢くんと話ししてただけー」
「そうか」
「そう言えばお目当ての子の名前まだ聞いてなかったや」

「灰崎凌兵だ」

おっと、ちょっと前に聞いた名前だぞぉ…
どうか同姓同名であってくれ。



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