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病室に残ったのは女性組だった。

「なし子はどうしたい?」

「えっと・・・」

どちらの意味ととらえていいのかチェインの質問にすぐ答えることはできなかった。
そんなわたしにチェインの言葉にK.Kは
「あの腹黒男が言ってたのは一旦おいて、」
と付け足した。

「・・・わかんない、ここにきて白紙に戻っちゃったし…」

「決めるのはアンタよ、私の個人的意見としてはなし子が帰れなくて万々歳」
「それはわたしも同意見」

K.Kとチェインは優しくクスリと笑った。

「だって仲間が居なくなるほど寂しいことはないじゃない?」

じゃぁ、息子の迎えあるから!と言ってK.Kは退室しチェインは「後でまた来るね」と言って窓から飛び出した
そのK.K達と入れ替わるように

「あのぉ〜…どーなったんすか…?」
「あ、戻ってきた」
ソロリとさきほどザップと逃げたレオが病室に戻ってきた。
「やあやあレオ、なんかすごいことになっちゃったよ」
はははと乾いた笑いしか出てこない。
「あたしどうすればいいんだよ、帰れないとか」

潮笑うなし子に小首をかしげたレオは口を開いた。



「じゃあ帰んなくていいじゃねーの?」

と、

さも当り前かのように。


「・・・いや、まってレオ近所じゃないんだ」

堂々と言ってのけたレオに半ばあきれたように返すが、

「だって、向うに帰れないならとりあえず帰る場所があるここに居ようよ」

「帰る場所…」

「そ、帰る場所、ここにもあるだろ?」




「今答えが出せなくてもなんとかいい方向に転ぶようにさ、考え続けようよ、」



レオはまぶしいほどに綺麗に笑い



「光に向かって一歩でも進もうとしている限り」


と、言い放った。


「これ、クラウスさんの受け売り」

「ありがと」


へらりと笑いあったワケもなく心から温かいものが溢れた。
帰る場所はあちらだけかと思ってはいたがそうだ、ここにも帰る場所があり、
頼れる仲間もいる。レオナルドの言う通り、考え続ければいい。思い続ければいい。




彼らが隣で歩んでくれる。




なし子は病室を飛び出した。
途中看護師さんに怒られたけどそんなの構ってられない。
病院を出て大通りに出ると見慣れたランブレッタと銀髪が居た。
近づくとゆっくりと紫煙を吐き出し言葉を紡いだ。

「オイ、旦那たち事務所だぜ」

「乗せてもらえるかな?おにーさん」

「代金たけーぞ」

「ビビアンさんとこのダイナーでも奢ろうか」

「3日分な」

「お安い御用」

ランブレッタのエンジンはかけられた




「おーおー!そろいもそろって勝手な事してくれますなー!」

ガチャリと開けられたドアからズカズカと入ってくるなし子
事務所のソファで向かい合っている男たちは一斉に彼女の姿を捕らえ目を見開く。

「!?」
「!?なし子!病院に居ろと…」
「シャアアラップ!スティーブン!ステイ!!」
「殴るぞ小娘」
「あいたっ!?」
スティーブンは言うと共になし子の頭にゲンコツを落とす。
なし子も殴られるとは思わず声が出た。
痛みで頭を押さえたが「そんなことより!」と声をあげ花京院達に向き合う。


「あたし、こっちでやることあるから帰らないから」

「なし子・・・」

「本当は帰りたい、もう一人のあたしだか何だか知らないけどそんなの関係ないしとか思ってる」

そうだ、知ったこっちゃない元はあそこはあたしの居場所だバーカ
性格悪い?なんとでも言いな!なんてどんどん内に溢れてくる考えを一つ一つ
しっかりと花京院を見つめ、言葉にしていく。


「でも一回会いたい奴がいて、殴って挨拶するまで帰らないから」


あたしをこっちに強引にも引きずり入れて「気楽に生きろ」といったあいつに会うまで。


「もしそれが叶っちゃったら、それはそれで考えるよ、光りに向かって一歩でも進もうとしてる限り」

へらりと笑ってクラウスを見やる。
クラウスは目を見開き見つめることしかできなかった。

「随分と、僕が死んでる間に逞しくなりましたね」
「人生何回も経験するばこんなもんよ」
「やれやれ、大人げねえのは俺たちの方だったな」

双方やはり本音は帰りたいし、連れて帰りたい。
だが、片方の強い意志によってもう片方はそれに頭を下げるしかなかった。




「向うのあたしによろしくね」
「えぇ、彼女もあなたに会いたがってました、」
「ま、向うも物珍しさに会いたいだけだと思うけどね」
「そう言ってくれるな」

話を付けた後昨日派手にやらかした場所に来た。
警察が昨日のうちに大方の処理はしたのだろう
少しは綺麗になっていた。
シーザーが携帯でどこかに電話をかけるとジワジワと空間にゆがみが生じた。
どうやらその歪みの中に入れば帰れるらしい。


「これだけ教えて、なんで会いに来たの?」

歪みへと歩もうとする前に振り返った3人に問いかけた。
切なそうな顔をした3人、その中で花京院は声を出した。


「・・・・どうしても、会いたかったんだ。僕は、」





「君を覚えていたから」





その言葉に驚きを隠せなかった。

「本能では忘れられねえ部分だってあんだ、俺らだって所々向うのあいつに違和感はあった」
「それに、独りなのであれば無理にでも連れ帰ろうとおもったんだ」
承太郎とシーザーは苦笑いをし「いらぬ心配だったがな」とこぼした。

「ホントそれな、まあでもこれで気楽に生きられるよ」
頭に置かれたシーザーの手に目を細めるこれでお別れなんだと
そう実感させる。

ギュッと心臓が締め付けられるような腹の底が暴れ出すような感覚をグッとこらえる。
両隣にいるクラウスとスティーブンが背中と肩を撫でてくれてゆっくりと息を吐く。
そうだ、大丈夫、大丈夫だから。

彼らのスタンドも姿を現しこちらを伺う、わたしも”6月の花嫁”を呼び出し
姿を見させる。

「相変わらず、オメーには意外なスタンドだな」
「あら失礼しちゃう」

純白のスタンドの姿に苦笑いをこぼす承太郎に半目で睨む。
そんなあたしたちの姿を見て承太郎のスタンド”星の白金”と
花京院のスタンド”法皇の緑”があたしの手を取り握りしめた。
「ありがとう、これでお別れとか言わないから、待ってて」
2体のスタンドを見つめしっかりと一言一句丁寧に言えば2体は安心したように離れる。

「時間だ」

シーザーのその一言で歪んだ空間が徐々に治り始めた。

「それでは、僕らは行きますね」
「おう、またね」
確証もない「またね」をつかいにっかりと笑ってやる。
その笑顔に安堵した顔を浮かべる3人

「うちの孫、頼むぞ」
「手はかかるがよろしく頼む」

「一言余計だっつーーの!!」

亀裂は徐々に治っていき、そこには何もなかったようになる。


「行っちゃった…」

「なし子、後悔は…ないだろうか?」

「後悔はありませんよ、こうして隣で歩んでくれる人がいるんで」
クラウスを見上げヘラリと笑う。
クラウスも又その笑顔を見て微笑み返した。


クラウスは牙狩り本部への連絡と病院の手続きをするため
先にその場を後にした。
残せれたスティーブンとなし子は吹き付ける風にあたりながら並んでいた。




「さてと、返事を聞こうかお嬢さん」

「はい?」

「さっきの僕の返事は?」

「・・・・いっけなーい!タイムセールの時間だわぁ!」

素っ頓狂ななし子の返しにスティーブンはやれやれと笑い

「お手をお嬢さん、病院までエスコートさせてもらっても?」

「飾りにもならない女でよければ」

お互いに笑いあい、
手を握りしめ車へと向かった。

2人の歩む後ろには黄色いアンダーソニアの花が咲き誇った。






『1部完』



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