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「何かいいわけはあるかな?」
「ないです...」

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あのあと背後にいたスティーブンに問答無用で首根っこを捕まえられ
彼の自宅へと入った。
玄関をくぐりリビングへと案内される。

「さて、とりあえず座ってくれ」

「あ、いや、でも」

「す・わ・れ」

土は粗方払ったとはいえまだ汚い。
高級そうなソファーに座るのは億劫だったが無理矢理圧をかけて座らされる

「失礼しまーす...」

なし子が座るのを確認するとスティーブンはカウンターキッチンへと足を運ぶ

数分後スティーブンは器用にマグカップを片手に二つ
もう片方の手には箱を持ち帰ってきた。

彼はマグを先に置き一つをなし子に差し出した

「ホットミルクでよかったかい?」

「ありがとう…」
とりあえずマグを受け取り口をつける。
暖かく牛乳の甘さが口に広がり少し落ち着く。

ほぅ、と一息つけば

「さぁ、それを飲んだら傷の手当だ」

スティーブンはいい笑顔で
もう片方に抱えられていた箱を掲げた




「うっ、いだだだ!!」
「仕方ないだろう、大人しくしろ」

ふっ飛ばされた時の傷が数か所に及び
顔、首、手、
その傷を丁寧に消毒液を浸したコットンを押し付ける。

思いっきり。

事務所を出る前にくぎを刺したにもかかわらず
少し嫌な予感がしGPSを起動させればどうだ、
事件の起こった路地裏に向かっているではないか。
帰路を進んでいたがすぐ車線を変更し急いで向かえば
もう事は終わっていた。
そんななし子に対し少しでもの腹いせである。

「いったーー!?!?なんで!?」

「指示を無視したのは?」

「ゴメンナサイ」
流石の彼女もこれ以上何も言わないほうがいいだろうと感じ大人しく謝る。

「で?他にまともに食らったところは?」

「あーあるけど、腹だしなー」

「どれ、見せてみろ」

ガッとスティーブンの手が彼女の服の裾を掴むが
彼女もスティーブンの腕をつかみ行動を阻止する

「ちょっ!まっ!そこは流石に自分でやる!!」

「君自身でやるなんて危なっかしい、僕がやる」

「仮にでも20過ぎた女なんですが!?」

「20過ぎた過ぎないは関係ない。仲間の治療ぐらいさせてくれたっていいだろう?」

「チェ、チェインとかK.Kだったら?」

「まずあの二人は滅多に怪我はしない」

「ぐっ」


結局「治療だ」と押し切られ仕方なくスティーブンにやってもらうことになった。


「ひひっ、いった、くすぐたいぃっ」
「コラコラ、暴れないでくれるか?」
「無理無理、ひはははっ!」

わき腹にできた痣に治療してもらってはいるが
くすぐったいのと痛いので身を揺らしてしまい中々進まなかったが
なんとか終えることができた。

「いやー、すみません」
「本当に思っているのか?」
「軽率でしたね、」
「2度目はないぞ」
「肝に命じておくね」
「でも、」
「ん?」
「本当に無事でよかった」
ぽんとスティーブンの手がなし子の頭に乗せられる。
「まあ、帰るまで死ねないからね」
なし子はへらりと笑って返す
「…まったく、君ってやつはなあ!」
「うっわ!?」
乗せたいた手をぐしゃぐしゃと動かし頭を撫でる。
「今日はもう遅い、泊まって行ってくれ」
「お言葉に甘えますね」
「とりあえず、シャワーに行ってくれそのままじゃ流石にな」
「はーい」



「まったく…」
キィと寝室の扉を開けなし子が寝ていることを確認しリビングへと行く。
静かにソファーへと体を沈めのけ反る。
先ほどの出来事、正直肝が冷えた。
あれがもし仮面によっての吸血鬼ではなく
眷属だったとしたら?
済んだこととはいえ嫌な考えが頭をよぎり胸糞が悪くなる。



「はぁ...お願いだから僕が届く範囲で死なないでくれ」



彼の独り言はリビングに響き、消えた。


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bkm
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