長編/氷福 | ナノ


おはよう。












いつからか忘れたけど、気付いた時にはタツヤと一緒にいた。俺は心の病気で外に出てはいけないらしい。何ていう病気かは教えてくれなかったけどそれは俺のためだといった。足首に繋がれている拘束具は前に自分が外に出ようとしていたから仕方なく付けているものだ。いつ病気が酷くなるかわからないから俺も了承している。そんな何もできない俺を甲斐甲斐しく世話をしてくれて、しかも同性なのに好きだと言ってくれる。申し訳ない気持ちより嬉しい気持ちが強かった。


カーテンからの明るい光に目が覚める。しばらく外から聞こえる音に耳を傾けているとコンコンというノック音と共にドアの開く音がした。起き上がってドアの方を見るとタツヤが朝ご飯を乗せたトレイを持ってドアの所にたっていた。

「タツヤ」

「福井さん、おはようございます」

「おはよ」

俺が名前を呼ぶとにこりと微笑みこちらにやってきベッドサイドテーブルにトレイを置いてベッドに腰掛けてやさしく口を塞がれる。目を閉じて唇を受け入れると何度も口付けてくれる。

「今日はクロワッサンとスクランブルエッグとサラダです。どれから食べますか?」

「んークロワッサンかな」

そう言えばクロワッサンを一口大の大きさにちぎって口に運んでくれる。親鳥に与えられる餌を食べる雛のように口を開けて食べる。ご飯を食べ終わるとタツヤはスーツに着替えはじめて出かける準備をした。

「今日も仕事なのか?」

「ええ…すみません」

「いいよ、大丈夫」

出かける前に玄関先まで付いていけば頭を撫でられてキスをしてくれた。嬉しさに頬が緩んでしまうと、タツヤも嬉しそうに微笑んだ。





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