福井side


ふああと大きな欠伸をしながら靴箱の蓋を開ける。漫画とかでよく(よくかは分からないが)靴箱にラブレターが入っている事がある。が、現実でそんな事をする女子はあまりいない。むしろラブレターを書く女子も少ない。絶滅危惧種とでもいうべきものだ。書く女子がいるのならば一度お目にかかりたい。
ぼんやりしたまま靴箱から上履きを取り出していると後ろから抱き締められた。ちらりと横をみるといつもの顔がにこりと微笑んでいる。

「おはようございます」

「お、よう」

氷室が後ろから抱きついてくるのはいつものことなのでそのまま無視して上履きに履き変え、歩きだすとすると氷室はぱっと体を離して隣を微笑を浮かべたまま歩きだす。なんともなしに氷室を見上げながら耳元にかかる髪の毛を耳の裏にかけていた。その何気ない日常的な行動すら美しく見えるのはこいつがイケメンだからなのだろうか、きっとそうなのだろう。
氷室がこちらに気付いたのか俺を見て少し困ったように微笑んだ。

「福井さんどうしました…?俺の顔に何かついてますか?」

「んー…いや、イケメンだよなあ…って」

「え、…ふふ、ありがとうございます」

「うぜぇ」









氷室side




近ごろの福井さんはあからさまに無防備な気がする。練習で疲れているのかいつものぴりぴりとした威圧感は0に等しく、気軽に話し掛けてください、と言わんばかりに隙がある。福井さんは女よりも男にモテるタイプ(前にこれを言ったら殴られた)だが、子どもをあやすのが上手いという噂が立ったことで女子からの人気が急上昇した。今だって福井さんの斜め後ろにいる女子二人が福井さんの方をちらちらと見ながらかしましくお喋りをしている。ああいう女子は噂で好きになったり嫌いになったりと忙しい。それに振り回されている男子をみると馬鹿馬鹿しく思えてくる。

「(今日は二通だったな………)」

鞄から二つの手紙を取り出す。これは今朝一番に学校行き回収した福井さん宛の手紙だ。毎日下駄箱に入っているを確認しては丁重に拝借している(福井さんに疑われないように取った後一度戻りまた学校に行く)。それをびりびりに破けば近くにあったごみ箱にぽいと捨てる。もしこの姿をみた女子は俺に幻滅するかもしれないが女子が幻滅しようと俺には関係のない話。俺には福井さんがいればいいのだから。当の福井さんを見ればあくびをしながら靴を履きかえているところだった。先程の女子もすぐ近くにいて話し掛けるタイミングを伺っているようだ。すぐさま上履きに履きかえ、福井さんの所に向かい、後ろから福井さんを抱き締め、その女子にじろりとにらみを効かせればそそくさと逃げるように廊下を小走りに走っていった。福井さんの方を見ればにこりと微笑む。

「おはようございます」

「お、よう」

慣れた様子で上履きに履きかえて歩きだす。歩きやすいように体を離せば近くを守るように歩く。無論福井さんには感付かれないように。視線を感じて福井さんの方を見ればこちらをじっと見上げていて、その素朴な表情に思わずかおが綻んでしまう。

「福井さんどうしました…?俺の顔に何かついてますか?」

「んー…いや、イケメンだよなあ…って」

「え、…ふふ、ありがとうございます」

「うぜぇ」

軽口をたたきながらも快活そうに笑う。その笑顔でまた一日やっていこうと思う。














 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
もう少しどろりっちさせたかったです∵
よかったら受け取ってくださいな!


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