*これの続き
*紫→福にみえるかも






場所を手に入れたらまわりを威嚇して、まわりから大事なものを守る。赤子でもやっていること。親を誰かに取られないように、母親の意識が自分だけをみるように、必死で泣き叫ぶ。必死で手を伸ばす。俺は高校生だし、元々の性格も感情を表に出さないのでそんなことはしないが。かわりにじわじわと、静かに、さりげなく






意識を奪う。








昼休み。授業がおわると同時に教室をでる。向かうは大事な大事な恋人の待つ三年の教室。毎日くるので女性からの視線やアプローチにも慣れた。最初は不快感で吐き気がした、というのは彼には黙っておく。

「先輩、ご飯食べましょ?」

「ん、ああ……」

俺が教室のドアの前で先輩に手を振る。先輩は休み時間に売店で買っていたのだろうパンと飲み物を持って立ち上がった。近くにいたゴリ…岡村先輩がきょとんとした顔で俺と先輩と交互に見る。

「なんじゃい、またか」

「あー、うん…まあな」

先輩は歯切れ悪く答える。そりゃそうだろう、後輩しかも男と付き合っているなんていいにくいものだ。俺はその姿をニコニコとして見つめる。いつみてもどんな表情も素敵だとしみじみ思う。先輩がパタパタと小走りでくる。俺は岡村先輩に会釈をすると先輩と屋上に向かう。

屋上は何人か生徒が屋上に備え付けられたベンチに座っていて思い思いのことをしていた。俺らはその一角に座った。俺は弁当膝にのせて開ける。中には卵焼きやウインナーなど弁当によくあるおかずが入っている。その中から卵焼きを箸で取り、相手の口元に持っていく。

「先輩、あーん」

そういうと先輩は真っ赤になってきょどきょどと目を泳がせてすぐ近くにいないといえども生徒がいないわけではない。はたからみて変に思われたら…と思っているのだろう。クスリと笑いそうになる、表情にはださないけど。俺は少し眉を下げて相手をみる。先輩はこの顔が苦手なようだ。少し俺と卵焼きを交互にみると「…あ、あーん」と戸惑いながらも卵焼きを口に含む。ゆっくり咀嚼するとごくり、と飲み込む。その一連の様子を観察するようにみる。

「おいしいですか?」

「ん?あ、ああ……」

まだ恥ずかしいのか周りをキョロキョロ見るが屋上にいる人はそれぞれが思い思いのことをしていたのでこちらをみている人はいなかった。俺はクスリと笑うとまた卵焼きを相手の口元に持っていく。先輩は困ったような表情を浮かべて頭を横に振る。

「お前の分の飯がなくなるだろ?俺はこれがあるからもういいよ」

そういって先輩はパンの入った袋を見せる。そういうわけにはいかない。そんな栄養の偏る食事をしていたら体調を崩してしまう。先輩の好き嫌いは知ってるのだから、先輩には俺が与えるものだけでいい。

「いえ、俺のことは気にしないでください。これは先輩のために作ってきたんです。」

「や、でも……」

「嫌…です、か…?」

少し淋しそうに先輩の口元から卵焼きを離して弁当の中に入れる。

「先輩に食べてもらえないならもうこれは処分しなくちゃですね…」

「は!?」

揺さぶりをかけると先輩は案の定ひっかかった。この人の考える事はわかりやすいので扱いやすい。そんなところも魅力の一つだけど。

「え、な、なら食べるぞ?」

「ほんとですか!?」

「あ、でもそしたらお前が食べるのがなくなるか……よし、こうしよう!お前の弁当は俺が食べるから、お前は俺のパンを食え!」

「え、あ、はい」

奪い取るように俺の膝から弁当箱をとり、膝にのせる。そして俺の前に先輩のパンを差し出してきた。狙った通りだ、これで先輩がパンを食べる事を回避できた。

「あれー室ちんに福井ちんじゃーん」

「あ、紫原」

斜め後方から声。見上げるように声の方をみると紫原がお菓子を頬張りながら近づいてきた。腕にある紙袋にはお菓子が沢山入っている。

「なになにー?二人ともご飯なわけー?」

間延びした口調でへらへらと近づいてくる。

「ああ、まあな」

「あー福井ちんのご飯おいしそー食べていいー?」

「え、あー…ッ…!!」

ちらりとこちらをみてきた先輩の表情が固まる。敦の表情も少し固い。俺の表情はわからないけど二人の反応から察するにいつもの表情ではないようだ。いけないいけない、愛すべき人を怯えさせてしまった。即座にいつも通りの微笑を浮かべるよう顔の筋肉を動かす。

「別に構いませんよ?」

「あ、え…そう、か…?」

まだ先輩は俺を恐がっている。まだ表情が恐いのだろうか…?

「…んーやっぱいいやー室ちんこわいしーめんどいしー」

「あ、そうか…」

先輩が少しほっとした表情を浮かべた。よかった、敦が退いてくれて…このまま敦が欲しがっていたら先輩はどちらの意志を優先するか悩むだろうから。
敦は踵を反して屋上からでようと俺たちから離れていった。数歩進むと立ち止まり、ぼそりと口を動かした。先輩は首を傾げたが口の動きから何を言ってるかわかった。敦がみえなくなると立ち上がり、トイレに行ってきます、と先輩に言って敦を追う。敦は俺が来るのを待っていたように階段の下でたっていた。その背中に向かって話し掛ける。

「゙臆病者゙か……随分の言われようだね。敦」

「だってホントの事だしー?ぽーかーふぇいすな室ちんにしては珍しいよねーそんなに福井ちんが大事なの?」

「大事だよ?凄くね」

敦にしては的確な言葉に思わずクスリと笑ってしまう。

「大事だから守るんだよ、何もかもから」

「守ってるというより脅してる感じしかしないんだけどー?」

「そんな事ないよ」

「どーだか……ま、俺には関係ないしー?どうでもいいけどねー」

「そう」

そういうと敦はまた歩き始めた。

「精々福井ちんに逃げられないようにねー」

こちらをみずに歩きながらそういって敦は俺の視界から消えた。




「遅かったな」

「すみません、トイレ帰りに先生に捕まりまして」

先輩の言葉に簡単な嘘をついて答える。先輩はすでに弁当を食べ終えており、ぼーっと空を見ていた。俺は先輩のすぐ隣に密着するように座って先輩の肩に頭を乗せる。先輩は一瞬ピクリとしたが゙後輩゙に甘えられるのが好きな先輩は嬉しそうに後ろから腕をまわして頭を撫でてくれた。

「先輩…好きです」

「……うん…」

頬を赤らめて小さく頷いて頭を傾けて俺の頭にこつり、とあてた。すっ…とずれると先輩の頬に手を添えて軽く上を向かせると顔を近付ける。先輩は緊張したように目を瞑った。そのままゆっくりと唇を合わせた。







捕まえた。

もう、逃げられませんよ。



先輩。



――――――
長……意味わからん…
むっくん出てきた意味がわからない(´;;◎ω◎;;`)アレーほんとはむっくんと福井先輩絡ませて福井先輩が氷室に溺れていってる、っていうの書きたかったんだが…氷室視点だからか…

まだ続く…かも