氷室→→→福井
氷室さんいやな奴かも













欲しいものを手に入れるためならなんだってしてみせる。
手段は選ばない。
自分の持っている知恵全てで相手を手に入れる。

誰にもばれないよう、丁寧に。



いつの間にか





いつの間にか













貴方は俺のものになっていく。












「福井先輩、」

にこりと微笑みながら相手に近づく。彼は俺の思惑など知らず首を傾げて、いつも通りの笑顔を向けてくれる。

「どうしたんだ?氷室」

「今度の試合で聞きたいことがあって…」

「じゃあ他の奴らも呼ぶか」

そういうと先輩は他のメンバーの方にむかおうとした、のでとっさに先輩の手首をつかんだ。女子ほどとはいかないにしても大柄な選手の揃った陽泉の中では小さめな先輩の手首は細く、力を入れたら壊れてしまいそうなほどだった。まあ、そんなことないのはわかっているけれど。

「あのなあ氷室…これだと呼びにいけねーよ」

「その必要はないです」

「は?」

先輩の顔に戸惑いの表情が浮かぶ。まずい、これだと怪しまれてしまう。にこりと微笑んで

「いえ、皆さんに聞いたら福井先輩に聞け、と言われたので…呼んでも意味ないと思って」

「ああ、そうなのか」

「ええ、じゃあ行きましょうか」

「?どこにだ?」

別に立話でよくないか?と首を傾げるのをみて俺はクスリと笑い

「立話もなんですから、ミーティング室に」
















***

「さ、どうぞ」

「ああ、さんきゅ」

ドアをあけて相手に入るように促す。いつもこうしているので先輩は疑うこともなく中に入る。先輩が入ると自分も入って相手に気付かれないように鍵をしめる。

「どうした?座らないのか?」

先輩はパイプ椅子に座ってこちらを向き、座らずにドアに寄りかかる俺を不思議そうに見る。微笑んで相手にゆっくりと近寄る。

「すみません…実は……試合のこと…嘘、なんです」

「は?」

「すみません嘘なんかついて…でも、伝えたくて…」

先輩は驚いたような、焦ったような困ったような表情をしていた。どんな鈍感でもここまでして伝えたいことくらい察しがつくだろう。俺は出来る限り申し訳なさそうに、"同情したくなる後輩"を演じなければ。先輩は情に弱い。先輩の前で膝をついて、先輩の手を握る。泣きだしそうな弱々しい声を出して懺悔するようにいう。

「好きなんです…先輩…」

「っ…!だが俺も、おまえも男…だろ?」

俺が好きだと言うと真っ赤になって俺をみる。こういうのに慣れていないんだろう。手が緊張で軽く汗ばんでいるのがわかる。可愛いなあ…

「わかってます……でも、でも…好きなんです…」

「っ…!!」

自分の瞳から涙がこぼれる。泣きたいわけではないが、こうしたほうが相手を落としやすい。先輩は俺が泣き出したのをみて動揺したように目を軽く見開く。もう少し、もう少しだ。

「お願いです…俺と…俺と付き合ってください…!同情でも、なんでもいいです…お願いします…!」

「……」







涙で視界が軽くぼやける中


先輩が小さく頷くのが見えた。












捕まえた。







あとは、心を手に入れるだけだ。













―――――
ゲス氷室になったェ………
でも氷室こんな感じなんだよね…
頭はクールに心はホットに!
続く、かも←