遠距離恋愛
空を見上げると天の川が流れており、月が時折雲に隠れては出てきていた。電話もなければ手紙のやりとりもできない、それなのに会えるのは一年に一度きり。それに比べて毎日メールのやりとりをして声が聞きたくなったら電話をしすることだって出来る。それなのに募るのは寂しさばかりで、会いたいという気持ちは日に日に強くなっていく。
塾の帰り道、近くの公園に立ち寄り自転車を止める。自販機で炭酸を買ってその場で一口口に含んだ。うえを見上げると視界に入るのは天の川。ふと、ベンチに一人座って着信履歴の一番上にある電話番号に電話をかけた。ぷるるる、と機械音が静か
な公園に広がっていく。数回のコールの後あいてに繋がった音と若干の息遣いが聞こえる。
『もしもし』
聞きなれた声が鼓膜を刺激する。
「よう」
『どうした?』
「いや、とくに用はねえんだけど 」
『なんだそりゃ、轢くぞ』
呆れたようにため息をつく音が聞こえる。いつもの脅し文句にくすりと笑うとまた、電話越しに轢くだの刺すだのと物騒な言葉が聞こえた。
『で、まじでなんも用ねえのか?』
「ん、んーいや、あるってっいたらある」
『なんだよ、さっさと言えよ』
「今日、何の日だっけ」
『今日?…あ、確か緑間が誕生日だったはずだけどそれがどうかしたか?』
「……いや、いいややっぱ」
適当に挨拶をして電話を切る。確かに祝日でも記念日でもない日だし、後輩の誕生日ならばなおさら気がつかないだろう。しかし素直に会いたいと口に出来なかった自分も、自分だけ二人を自分に重ね合わせていることももどかしく思った。宮地も自分と同じように会いたいと思っているのだろうか、それとも…。
「(やめよう…)」
どうにも夜になるとネガティブな方向へ頭がいってしまう。頭を横に振って悪い考えを振り払う。
立ち上がってもう一度空を見上げたが、雲に隠れて天の川は見えなくなっていた。
「ただいまー」
家に帰りついて靴を脱いでいると母親がぱたぱたと
スリッパを鳴らしながらやって来た。
「あら、おかえりなさい。ご飯は?」
「食べてきた」
「そう、あと健くん宛になにか届いてたわよ」
母親が指さした方向を見ると小さなダンボール箱が置いてあった。差出人には先程まで話していた相手の名前が彼らしい字で書いてあった。慌てて部屋に戻って箱を開けるとギザギザした果物らしきものと四つ折にされた二枚重ねのルーズリーフが入っていた。開けて見ると大きく太い字で
《健介へ
田中に貰った
スターフルーツっていうらしい
切って食え》
と書いてあった。
「スターフルーツ?なんでまた…」
首をかしげつつ二枚目のルーズリーフをみる。
《Ps,俺達が会えんのはまだ後だな》
「ああ、そうだな」
頷いて手紙を机の上に置く。
スターフルーツの甘い匂いが鼻を掠めた。
……
七夕宮福でした!
天の川→星→スターフルーツ
ということです
どういうことでしょう
わかりません
IHは七夕前ですよね…?
ごめんなさいオチは二号に食べられました
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ー戻ー