ぱたぱたと大粒の雨が傘を濡らしている。確か予報では珍しく晴れると言っていたがやはり予報は結局予報のようだった。昼までは晴れていたため傘を忘れた人が一人また一人とスーツの上着や鞄で雨を避けながら走り去っていく。かくいう自分も先程まで小走りではあったが鞄を盾に走っていた。しかしどんどん強くなる雨足に雷も鳴りはじめたので近くのコンビニの前で雨宿りをすることにした。傘を買おうにも既に時は遅く全て売り切れていた。一応雨がっぱは売っていたのだが200pを超える自分の身長に合う合羽は一つもなかった。当たり前といわれれば当たり前だけれど。
走った時に跳ね返った雨水で足元が生ぬるく、べとりと張り付く感覚に軽く鳥肌が立つ。鞄の盾もあまり意味がなかったようでシャツの下に着ていたTシャツがくっきりと透けていた。シャツが張り付く感覚が気持ち悪くさっさと脱いで雑巾を絞るようにきゅっと絞るとぱたぱたと溢れるように水が滴り落ちる。
べたつくが先ほどよりは水気のきれたシャツを羽織り歩道を歩く生徒たちを眺めた。走ってる人やきちんとかさを持ってきている人。はたまた傘を忘れて友人の傘に入れてもらっている人なんかもいる。自分も彼らと同じようにまた雨に打たれながら帰ろうかと荷物を持ち直しているとぱしゃぱしゃと水を跳ねさせながら誰かが近づいてくる音が聞こえた。
「何やってんだ?」
「福井…」
聞きなれた声に顔を上げれば見慣れた蜂蜜色のパサパサした髪に目つきの悪い三白眼が立っていた。
「雨宿りアル」
「ふーん?じゃあこれ使えよ」
「は?」
差し出された傘に戸惑いの色を隠せなかった。わからないまま受け取ると福井はぱっと身を翻し雨の中駆け出した。慌てて手首を掴むとキョトンとした顔でこちらを見てくる。
「んだよ、濡れるだろ」
「福井これないと…」
「友達のやつに入れてもらうからいーんだよ」
「じゃあ私と…」
「お前自分の体型と傘の大きさ分かっていってんのか?」
確かに福井の傘は自分一人が入るので精一杯で2人で帰るには大分辛いものがあった。福井は掴んだ手から逃れて軽く私の腹を小突くと手を振ってそのまま走り去ってしまった。見ると歩道のところで待っていた友人と思わしき人の傘に割り込むようにして入っているところだった。二人仲良く歩いていく姿を見送って自分も傘をさして歩き出す。傘から少しはみだす肩に落ちる雨が染み込んでいく。 自分の身長を好ましく思うことより嫌に思う事の方が多いが、これほど憎く思ったことはなかった。
梅雨と劉福
途中からなにを書きたいのか分からなく
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