今日は受験の関係で部活は休み、しかも午前授業だった。むしろ一日休みにしてくれればいいものをと周りのクラスメイトはぼやいていたが午前だけで御の字だと思う。そんなことを思っているのを顔には出さず氷室は頬杖をついて外を見た。

「あ…」
















今日は珍しく寝坊をしてテレビを見る暇などなく、外も晴れていたために傘など持ってきていなかった。
土砂降りとまではいかないが少し強めの雨でとまる気配はない。弱まらないかと一人教室で待っていたがだんだん強くなる雨にため息をつけば立ち上がり教室を出た。




「あれ、室ちんみっけー」

「アツシ…なんでここに?」

氷室が下駄箱まで降りると大きな体を縮こまらせてしゃがんでいる巨体がいた。紫原は氷室を見るとねむたそうな表情でへらりと笑いよいしょ、といいながら立ち上がった。

「んー今日傘忘れちゃってさー室ちんの傘に入れて貰おうかなーって」

「そうなのか?ごめんアツシ…俺も忘れたんだ」

「えーまじで」

紫原はあからさまにがっかりした様子でしゃがみこんだ。氷室は軽くしゃがんで頭をぽんぽんと撫でる。少し弱まるまで待っていようと氷室が言えば唇を尖らせつつこくりと頷いた。





「やまないねー」

「そうだね…」

暫く待っていたが全く止む様子はなく、ぽつぽつと会話をしていたが雨の音に掻き消される。


「お前ら何やってんの?」


いきなり降ってきた声に驚いて後ろを振り替える。後ろには福井先輩がきょとんとした顔で立っていた。コートとマフラーをして今まさに帰ろうとしていたようだ。

「あ、先輩…いえ、二人して傘忘れちゃって…」

「はあ?お前ら馬鹿だな…ほら」

そう言えば手に持っていた傘を差し出してくる。

「え、でもこれ…?」

「いいから使えって、俺折り畳みあるし」

押し付けるように傘を渡されて氷室はよくわからないながらも受け取った。そのままじゃあな、と片手を上げて先程来たであろう方向に歩いていく。二人して顔を見合わせればどちらかともなくクスクスと笑ってしまう。

「あれ嘘だよねー」

「まあ、ご好意に甘えようか」

傘をさして二人して入る。180p越えと200p越えの巨体が一つの傘に入っても肩は出てしまい、どう頑張っても濡れてしまう。寒いねーなどと笑いながら帰り道を歩く。学校の近くにある寮にはすぐに着いて紫原が傘を折り畳もうとすると氷室がそれをそっと制止して顔を寄せ唇を触れ合わせる。天気が悪いので薄暗くよく見えないが紫原は若干顔を赤らめているようだった。慌てたように離れて口元を押さえて睨んできた。

「…なにすんの」

「ん、?キスだけど」

「じゃなくてー、なんで?」

「なんとなく?」

そう言えば恥ずかしがっている自分が馬鹿馬鹿しくなったのかはあ、と嘆息した。そんな様子を面白がるように切れ長の綺麗な瞳を細めて微笑んだ。


雨はいつの間にか止んでいた








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氷紫って基本的に甘いイメージ
なんか不完全燃焼