ある日の王の選定者達
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「…ジュダルくんは、「つんでれ」なのかい?」
「あ゙?」
思いもよらない質問に凄んだ声が出る。
舌打ちしながらアラジンを睨むと、アラジンは怯えたような表情をした。
「ごっ…ごめんよう。
でも、おじさんが「ジュダルはツンデレなんだよ」って言ってたから…」
あのバカ殿…チビに何吹き込んでんだ。
「なんで俺がツンデレなんだよアホか。…って伝えとけ」
俺は呆れ、笑いがら横に置いてあった桃を食う。
そんな俺の様子をジッと見ていたアラジンがおもむろに口を開いた。
「ところでジュダルくん」
「あ?なんだよ」
横を見ると、不思議そうに首を傾げたアラジンが上目づかいでこちらを見ていた。
しかしアラジンは、可愛いとか押し倒したいとか食べたいとか襲いたいとか、そんな様々な思考妄想さえも一瞬で消し去ってしまうような質問を俺に投げかけてきた。
「「つんでれ」って何なんだい?」
「げふぉぁ!」
食べていた桃が気管に入り激しく咳き込む。
「ジュダルくん!?」
「だっ…大丈夫だ。咽せただけだ気にすんな」
心配そうにするアラジンに俺は涙目で言う。
桃が喉に詰まって死ぬかと思った…。
「うん…。で、「つんでれ」って何なんだい?」
(その説明を俺にしろと…!?)
俺だって詳しい意味は知らない。
取りあえず一般的な解釈を言っておくか…。
「「ツンデレ」ってのはなぁ、いつもはツンツンしてるのに好きな奴の前になるとデレデレする奴のことだ」
それを聞いたアラジンが怪訝そうな顔をする。
「…ジュダルくんは好きな人の前だとデレデレになっちゃうのかい?」
「いやだから、俺はツンデレじゃねーって!」
俺がツンデレでないということはイマイチ伝わっていなかったらしい。
俺の否定の言葉に、アラジンはつまらなさそうな顔をした。
「ふうん…。じゃあ、もう一つ聞いてもいいかな?」
「言ってみろよ…」
嫌な予感がする…。
いや、嫌な予感しかしない。
「「やんでれ」ってなんだい?」
「ぶっ!」
なんとなく分かってた。
分かってたけど―――――
「それもバカ殿が言ったのか!?」
しかしアラジンは首を横に振る。
「ううん。これはアリババくんが言っていたんだよ」
おいおい、よりによってアイツかよ…。
嫌な顔をする俺にも気付かずに、アラジンは何かを思い出すように顎に指を当てて続けて言った。
「「アラジンの前なら俺はヤンデレにもなれるぜ」
って言われたんだけど、イマイチ意味が分からなくって…」
全身の血の気が引いた。
「逃げろ!今すぐ逃げろ!むしろ来い!煌帝国に移住しろ!」
そんな奴と同じ布団でアラジンを寝かせられるか!
しかしアラジンは必死になる俺をよそに、無垢な瞳を向けてくる。
「それで、「やんでれ」の意味は…」
そんなもん説明してる隙なんかねえ!
「そんなの今はどうでもいいんだよ!
お前にもしものことがあったら俺はっ…!
…………あ」
しまった。
「あっ!今デレた?」
「あっ!」とか言うな恥ずかしい…!
「はぁ!?デレてねえし!
べっ…別にお前のことなんかこれっぽっちも心配してねえからな!本当だからな!」
顔を真っ赤にして反論する俺が面白いのか、アラジンはクスクスと笑う。
「はいはい、そういうことにしておくよ。
…ねえ、ジュダルくんは僕のこと好き?」
そう言いながら俺の手を握るアラジン。
ニコニコしながら俺の方を見てくる。
「おぉ、なんだよいきなり…。
…別に嫌いじゃねえけど。どっちかっていうと好きっていうか、なんつーか…」
その応えに満足したのか、アラジンはより一層強い力で俺の手を握ってきた。
「そっか…!僕も同じだよ。僕も、ジュダルくんのこと大好き!だから……」
ゆっくりと顔を近付けてくるアラジン。
その顔には十歳とは思えない妖艶な笑みを浮かべており、俺は無意識のうちに顔を引きつらせた。
「ジュダルくんを他の人にとられるくらいなら
僕の手で君を殺してずっと一緒にいたいな…。
なーんて……ね?」
「お前意味知ってんじゃねえか!!」
マギたちは今日も仲良しです。