運命



最後にちょっとだけネタバレ有り。
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僕を見た瞬間、彼は「信じられない」という顔をした。


それもそのはず、人々が寝静まった深夜2時





僕は煌帝国上空にいた。




「何でこんな所にいるんだよ」


出会った時、彼もまた空を飛んでいた。


「眠れなくて」


僕は極力自然な笑顔を作って彼の問いに答える。


「それだけで、こんな所まで飛んで来たのか?」


「そうだけど?」


即答すると、彼は不審そうな悲しそうな何とも言えない顔で僕を見た。

本当は別の用事で来たんだけど、鈍い君は気付かないんだろうなぁ………。



「君こそ、こんな所で何やってるんだい?」


「………ここは俺の国だ」


あ、ちょっと怒ってる。

こんなこと言うのもどうかと思うけれど、彼を怒らせるのは凄く楽しい。


ちょっとからかうだけで直ぐ顔に出るし。



「ここは君の国なのかい?随分と偉くなったもんだね」


「あぁもう面倒くせぇな!!俺が「働いてる」国だ!
分かったか!?」


ほらね。


「それくらい知ってるよ」


君の反応が面白くって、僕はクスクスと笑う。


「……………」


嫌そうな顔。

いつも僕をからかって遊んでるくせに、自分がからかわれるのは嫌なんだね。


そんな君の発した言葉を僕はしみじみと口に出してみる。


「そっか……自分の『国』かぁ………」


「………なんだよ」


「羨ましいな」なんて、
とてもじゃないけど言えなかった。
彼には彼の、僕には僕の生き方があるんだ。


「うん?別に、大したことじゃないよ。
じゃあ、僕はもう帰るから」


「あっ、おい!!」


「このこと、おじさんには黙っててね!」


引き留めようとする彼を無視して、僕は踵を返した。



「何しに来たんだアイツは…」








結局言い出せなかった…。

でも、彼なら大丈夫。
彼には自分が帰るべきだと認識した『国』があるのだから。



(でも僕には……)


僕には『国』がない。
だからこそ、出来ることだってあるんだ……!






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「アラジン、それは本気で言っているのか!?」



「うん。
おじさん、ヤムさん、
僕………………













マグノシュタットへ行こうと思うんだ――――――」



少しの間、君とはお別れしなくちゃいけない。
だけど、きっとまた会えるから。





僕達がマギである限り。




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