アラジンside
ここに来てから、どれほどの時が経ったのだろう。
空に浮かぶ満月を見上げながら、アラジンはふと考えた。
バルバッドで起きた大革命が、まるでずっと昔にあった出来事のように感じられる。それだけ、今の生活に中身が無いということだろうか……。
シンドリアでの暮らしは何不自由なく過ごすことができている。だが、それ故に毎日が流れるように過ぎて行くように感じてしまう。
(そういえば……)
思い出したのは、自分と同じ「マギ」であるあの男。
黒いルフを身にまとい、卓越した魔法により多くの人を傷つけた。
しかしアラジンが最後に見た彼の姿は、白ルフに囲まれ力を奪われた、何とも弱々しい姿だった。
(怪我とかじゃ…ないよね)
敵だと分かっていても、何故か彼の心配をしてしまう。それは同じ「マギ」であるからなのか、それとも……
「ウーゴくんがいたら、教えてくれたのかなぁ?」
宿主の消えた笛はただ冷たいばかりで、何も教えてはくれなかった。
本当の気持ちに気付くのはもうちょっと先の話……