苦悩、発覚、距離A
「そ……そんなことしてるわけないじゃないか!
大体、他人を自分の部屋に招き入れるなんてこと僕がするわけないよ!」
苦し紛れの嘘。
だが、僕の言葉にアリババくんは納得した様子で、
表情も安心しきったものに変わっていた。
「そうだよな………
そうだよなぁ!?お前が部屋に他人を部屋に入れて楽しそうに会話してるわけないよなぁ!!」
「も……もちろんさ!
僕がそんなことする奴じゃないってことは君もよく知ってるだろう?」
「うん、まぁお前のことは正直まだよくわからないけど、嘘を付くような奴じゃないってことぐらいは分かるさ!」
ぐさり
心が、痛い。
騙されているアリババくんを滑稽に思うよりも、
親友に嘘をついている自分がたまらなく嫌になった。
「でもさ、確かに会話は聞こえてきたんだよなぁ…」
「そうなんだ〜。不思議だねぇ〜」
「不思議だなぁ〜」
そう言うと、アリババくんは「あっ!」と何か思い出したように僕の方を見た。
「あのさ、俺一度でいいからお前とじっくり話がしてみたいと思ってたんだよ!それでさ、
今夜お前の部屋行っていいかな?」
い い わ け な い
「今日はちょっと……。
明日じゃダメかい?」
今日はまだジュダルが部屋に来る予定だ。鉢合わせなんて冗談じゃない。
なんとしても避けないと。
「そっか。ま、都合が悪いなら仕方ないよな」
僕は「ごめんね」と一言謝り、部屋に戻ることにした。
アリババくんとの会話で
体力を使い果たし、僕は
くたくたになっていた。
ジュダルが来るまで、時間はまだまだある。
僕は少し仮眠を取るためにベッドに横になり、
そして、今夜彼に大切な話をすると決意して頭から
布団を被った。