こんな筈じゃなかった






「ん?どうかしたか?」


問いかけると、彼は少し恥ずかしそうにしながら口を開いた。


「あの…ね?普通の子って、小さい時に「お父さんと結婚する」とか言ったりするんだろう?」


「………うん」


まぁ、無いことはない。
多分。


「それで、その……

僕も言ってみたいんだ。
ダメ………かな?」


「ダメなわけないだろ!
気が済むまで言いなさい」


即答してしまった。
まったく……我ながら呆れるな。いや、なんかもう
自分が怖いな。


「じ…じゃあ、言うね?」


アラジンもちょっと引いてるじゃないか。
どうしてくれるんだ、俺。


「ぼ…僕、大きくなったらシンドバッドおじさんと
結婚する!」







何かが壊れる音がした。







俺は、無意識のうちに
アラジンを思いっ切り抱き締めていた。


「ひゃあっ!?」


「あぁ、ずっと待っといてやる!10年後なんかどうだ!?君が20で俺が38!うん、問題ないな。
あとは式場だか……やはりシンドリアで行うべきか?いや、ここはあえてバルバッドあたりで………」


「おじさん……」


「ん?どうしたアラジン」


「おじさん怖い」


「あ………………」


やってしまった。

アラジンの顔を恐る恐る
覗くと、今にも泣きそうな顔をしている。


「わ…悪かったな、アラジン。変なこと言っ「何してんスか」


突如入り込んできた声に驚きつつ、声の主の方を見やる。


「や…やぁ、アリババくん。どうだい、修行の調子は」


そこには、苛立ちを隠そうともしないアリババの顔があった。眉間にシワを寄せて、思いっ切りこちらを
睨んでいる。


「何してんのかって聞いてんスよ」


「いや、これはだなぁ…。その………」


アラジンを抱き締めているこの状況では、言い訳の
しようがない。
だからと言って、正直に話すわけにもいかない。


「取りあえず、アラジンを離してやってもらっていいですかね」


「あ…あぁ、それは一向に構わないよ」


そう言いつつ腕の力を弱めると、アラジンは驚くほど速くアリババのもとへと
駆け寄った。


「うわぁぁぁん!アリババくん、ありがとう!」


「おう。もう二度とあんな変態に変なこと言うんじゃねぇぞ?」


「うん、気をつけるよ!」


そう言いながら、二人はさっさと部屋へと戻って行ってしまった。

そして残ったのは、壊れた臣下と数名の兵士たち。
数秒の沈黙のあと、周りがざわつき始めて「変態」だの「ショタコン」だの聞こえてくる。




………本当に、



どうしてこうなった






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