やばいたおれる。

ふらりとからだが傾ぐのがまるで他人事のようだった。力が入らない、頭がいたい。だから暑い日の体育なんてきらいなんだって…





目が覚めたら視界いっぱいの白髪 なんて最悪だ。感じたありのままを口に出したら「白髪じゃなか」と不満げに返される。まああんた苦労してなさそうだもんね。そのうち柳生くんの方が白髪になりそうでわたしは心配です。


「…ほけん室…」
「熱射病で倒れて運び込まれるなんてお前さんもひ弱じゃのう」
「仁王なんかひ弱でもないのに保健室にいるじゃん」
「デリケートと言いんしゃい」


うそこけ。いまだにボーッとする頭を片手で押さえて起き上がる。目眩がした。仁王は座っていた椅子から立ち上がって隣のベッドにもぐりこむ。保健の先生は留守みたいだ。


「さっきまで赤也がいたぜよ」
「…いま授業中…」
「教室からグラウンドが見えたんじゃと。やかましいから戻しておいた」


もうすぐ授業が終わるから、また飛び込んでくるじゃろ。仁王の言葉が終わらないうちにチャイムが鳴った。と同時にバッターン!とドアが開く。まさに仁王の言葉通り、モジャモジャが飛び込んできた。いつもと違う強張った顔が、ベッドの上のわたしを見てぐにゃりとゆがむ。


「先輩!目さめたんスね…!」
「赤也…」
「よかった……先輩倒れるとき、俺心臓止まるかと思ったんですよ…」


枕元まで近寄ってきた赤也が、そっとわたしの体を引き寄せた。ぽすんと軽快な音をたてて、わたしは赤也に抱きしめられる。お昼休みにわたしが抱き着いたときとはぜんぜん違う抱きしめ方だった。筋肉質の腕。大きな手の平。高い体温。ドクドクと鳴る心音。ああ、心配させちゃったんだなあ。ごめんね。ここまで全速力で走ってきてくれたんだよね。言いたいことが溢れそうなのに、喉のあたりでつっかえて出てこない。頭がボーッとする。熱射病のせいにしては胸があつい。なんでわたしドキドキしてんの。赤也は子犬みたいな可愛い後輩な はず なのに。


「あ、あか や」
「先輩、まだ具合わるそうだし今日早退したほういいっスよ。俺が先輩んちまで送りますから」
「そんな、いいって!そしたら赤也部活、」
「今日くらい休んだって平気っス。先輩一人で帰らせたら俺、心配でテニス出来ねえし。大丈夫っスよ、先輩おぶって帰ったら筋トレにもなるし」
「えええええ」


そんな無茶苦茶な。赤也はやっとわたしを離すと、晴れやかな笑顔で「先輩の荷物とってきます」と言って保健室から飛び出していった。一気に静かになった保健室で、こらえきれなくなった仁王がブフッと吹き出す。とっさに手近にあった枕を投げたけど、動揺しまくったコントロールに枕は見当違いな方向へ飛んでいった。


「ギャップ萌えか」
「あええええええ」


そんな馬鹿な。



100613

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