4時間目の授業っていらないんじゃないかと思う。どうせみんな先生のはなしなんて聞いてない。斜め前の丸井なんかシャーペンも出さずに寝てるし、わたしだってノートにぐるぐるよくわからない線を重ねていってるだけでぜんぜん頭に入らない。お腹へった 眠い。寝ちゃおうかなあ。うつぶせになってはみたものの、日光がまぶしすぎて眠れそうにない。初夏の日差しがわたしの頭をガンガン叩いてくる。窓際の席はこういうとき不便だ。
ポキ、と軽い音をたててシャーペンの芯が折れた。あらら ノートには丸にすらなっていない謎の形状のラクガキが出来上がっている。あ…なんかこれ、黒くてモジャモジャしててなんかに似てる。


「…ワカメ」


ポツリと呟くと、隣の席の子が顔をこっちに向けた。「今なんかいった?」「ん、なんでもない」キーンコーンカーン、生徒を救うチャイムが教室に響いた。






「先輩!」


教室のドアがすごい音で開いても、だれも驚かない。むしろみんな微笑ましく赤也を迎えている。いつもご苦労さま、なんて言葉まで聞こえてきた。赤也はへらりと笑って頭を下げた。そしてすぐわたしの方へ駆け寄ってくる。なんてかわいいんだろうこの子は。


「先輩、俺さっき理科の実験だったんですよ!」
「へー、理科ってなに、科学?」
「生物っス!」


わたしとわたしの隣、丸井と丸井の隣の席をくっつけながら、赤也は整った眉をぎゅうっと寄せた。


「マジつまんなかったっスよ。オオカダナモとかただの草ジーッと見るだけで」
「オオカナダモね。なんか懐かし、わたしたちもやったよねーそんな実験」
「俺覚えてねーし」
「トリ頭」
「ミジンコ胸」
「オイそれどういう意味だ丸井いいいい」


丸井につかみ掛かろうとしたら、ひょいとよけられた。すばしっこいやつ。仕返しに丸井の机に積み上げられていたブラックサンダーをひとつ取り上げると、「おまっマジざけんなぃ!」とすごい形相で叫んだ。いや、ブラックサンダーごときでそんなに怒るなよ。安いじゃん。おいしいけど。
丸井は食べ物のことになるとうるさいので、さっさと返しておく。お腹もへってさらに疲れた。どさ、と椅子に座り直したところでようやく、隣のワカメがしゅんと縮んでいることに気がついた。

「赤也?」
「………俺、もっと早く生まれてきたかったっす」
「え?」
「そしたら先輩といっしょにオオカナダモ見れたのに…」
「…あ、赤也……!」


なんて可愛いことを言ってくれるんだろう、この後輩は。思わず立ち上がって赤也に抱き着く。ほっそい体をしてるくせして、ぐらりと揺れることもなかった。「せ、せせせんぱ い、」顔は見えないけどたぶん赤也は今まっかなんだろうな。ホントかわいい。丸井のため息が聞こえた。柔らかいかと思っていた赤也の二の腕は固かった。



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