灰色の空を思い切り睨みつけた。これは絶対雪が降るであろう天候で、なぜ今年に限ってこんなにもいいタイミングなのだろうか、と一人ぼっちのカフェが切なくなる。今まで三回過ごしてきたスクアーロとのクリスマス。今年はどうやら例年の通り上手くはいかないようで運悪く彼は一週間前から長期出張に出されていたのだ。彼はすぐに帰って間に合わせるとか言ってたけれど、あたしだって同業者だ。長期ということは相手は悪いし、簡単に片付くものではないと分かっている。今年はどうやら一人で過ごすことになるんだろう。ひとりは寂しいから、と彼を仕事に連れて行ったボスに八つ当たりとしてデートを申し込んだが呆気なく一蹴された。馬鹿に付き合う時間は無いとか酷いと思わない?これでもスクアーロを落とした女なんですから。



「今夜はやけ食いでもするかな」



一人で居ては何も楽しくないから、食べることで誤魔化そうと思いついた。冬だからいいもん。任務で取り戻すからいいもん、と店員さんを呼んでスイーツをありったけ頼んでみた。店員さん、こんなに食べれんのって感じでものすごい驚いてたけど気にしないもん。料金請求先はもちろんヴァリアーだ、ざまーみろボスめ。いますぐスクアーロをジャッポーネにつれてくるんだったら止めてあげるけど、と思いながらミルクレープを口の中に突っ込んだ。甘い甘い甘すぎるけど、スクアーロと過ごした時間の方が甘い気がすると感じたら寂しくなってきた。ああやっぱり雪が空から舞い降りてくる。これがホワイトクリスマスってヤツかな。こんな時間を一人じゃなくてスクアーロと過ごしたかった。表に出来ない仕事をしているのだから、普通の人たちみたいに幸せになれるわけ無いと分かってはいるが、せめてこんな素敵な日ぐらい幸せを与えてくれてもいいのに神様って本当にいじわる。ガラス越しに通り過ぎていく日本人のカップルが羨ましい。



「もしもし」

「今すぐ帰ってこい」

「いーや。いまは業務外でーす。だからボスの言葉は聞けませーん」

「馬鹿なこと言ってんじゃねえ」

「馬鹿でいいもん」

「…あのカスから任務完了報告受けたぞ」

「…ほ、ほんと!?い、いつ帰ってくるって?」

「しるか」



急にかかってきたボスからの電話は、急に切られてそれで終わった。一人沈んで居るあたしを慰めてくれたのか、ボスはスクアーロが任務を終えたと知らせてくれた。これは今世紀最高のボスからのクリスマスプレゼントだよ。あ、でも料金請求はヴァリアー宛て変更なしだけどね。だけれど、今日彼と会うのはやっぱり不可能だろう。今夜は寂しくシャンパンでも飲んで部屋で過ごそう、と頼んだスイーツを全て持ち帰り用に変えてもらった。ベルとマーモンにでも押し付けてやろうかなんて企んだ。長居してすみません、と店員さんに謝ったら突然紙切れを手渡された。首を傾げてそれを開けばケータイ番号らしい数字の羅列。



「ずっと一人で居られましたよね。この後すぐに仕事終わるんで、よろしければ、俺と一緒にどうですか…?」

「…え?あ、あの…?」



少し赤らめた顔を俯かせながら店員さんはあたしに持ち帰りようのケーキを渡してきた。あれ、もしかしてあたし今ナンパってやつをされてるのかな。日本人は消極的だって聞いてたけれど。どうしようかなと悩んでいたけれど、応え返すことは出来なかった。後ろからあたしを包み込むようにいきなりスクアーロがそこに居て、荒げた息であたしのかわりに「悪ィな」と断ったのだ。比較的小さな声だったけど、その中に含まれている殺気と睨みがはんぱないよスクアーロ、相手は一般人なんだから。というかそれより、



「なんでここに居るの」

「なんだぁ゛、居ちゃわりいのかよ」

「なんで、って。仕事終わったばっかじゃないの」

「…すっ飛んできた」



少しそっぽを向きながらそう言った彼がとてつもなく可愛らしくて、思わず抱きついた。長い間この雪空の中をあたしを探して走り回っていたのか、コートを纏っているにもかかわらず彼は冷たい。ぎゅうと抱き締める力を強めたら、彼は一緒に居てやれなくて悪かったなとか言ったけれど、今となってはどうだっていいことだ。だってあなたがここに居るんだもの。突然スクアーロは改まったようにあたしを引き剥がして両肩をつかんで見つめ合わせてきた。そして取り出してきたのは可愛らしい箱に包まれた指輪。なにこれどしたの?ときょとんとして聞けばうお゛お゛いムードねえなあ゛なんて言われた。失礼な。そこから指輪を抜き取って、あたしの薬指にはめ込んだ。指輪の金属感が妙にリアルだ。よく訳がわかってないあたしはスクアーロが俺と結婚しろと言ったことでやっと気が付いた。今あたしプロポーズされてるんだ。もちろんOKだ、当たり前に。それはいいんだけどさ、こっちの手は右手なんだけどなあ、と気が付いていないスクアーロに可哀想だから、それは言わないで思いっきり彼に飛びついた。







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