ぴこぴこぴこぴこ…

どーん


ばーんずささっちゅどーん!



「あーあ、またやっちまったよ…」
「言葉遣いわりいぞぉ」
「こんだけ負け続きだと言葉遣い悪くもなるよ。なにこれ?私が負けるように出来てるんじゃないの?」


んなわけねぇだろ、とスクアーロのツッコミ。ふん、それくらい分かってますよーだ

それにしても、負けすぎな気がする。私の数えた限りではもう12回は負けてるはずだ。これってヴァリアーとしてどうなの?そもそも人としてどうなの?


「レベルマスターしたのにザコにやられるって……もはやこの弱さは才能な気がする」
「俺は最新型ゲーム機でぴこぴこなんてレトロな音出せる方が才能的な気がするぞお」
「それはアレですね、私の中のゲーム史がホケモンで止まってるからですね」
「だからアクションゲーじゃなくてパズルゲーにしとけって言ったんだあ」
「だってあんなちまちましたやつやっても楽しくないじゃん!」


とは言いつつ、敵をこてんぱんにぶっ倒す爽快感を求めて買ったこのゲームは、開封して以来私を苛立たせるばかりだった。
ボタンで技が出せていくら闘っても血生臭くならないなんて素敵!
とか不純な動機で選んだのが悪かったのだろうか。


唯一育てることのできたツンツン金髪碧眼の彼は、プレイキャラの中でもずっと使いやすい代わりに根暗で使っているとこっちが鬱になるという残念なオプションが付いていた。童顔で可愛いんだけど。

あーあ、この可愛い女の子とか使ってみたいなあ。でも遠距離攻撃苦手だし…懐いてる男の子の方もいいなあ


「勝てないくせに、ずっとやってて楽しいのかあ?」


キャラクター選択してると、スクアーロが私の肩から画面を覗いてきた。ちょ、肩に顎乗せないでほしい。てゆーか近い!ち、近すぎる!

私が密かにドキドキしていることなんか露知らず、スクアーロは呑気に男ばっかだなぁなんて呟いている。


「しょ、しょうがないでしょ、戦闘ゲームなんだから!」
「その割にはちっせぇガキも居るぜえ」
「そういえばベルも、このくらいの頃からヴァリアーに居たよね」
「あんときから手に負えねえガキだったなあ」

スクアーロが懐かしそうに笑う。
そうですね懐かしいですね!
でもさっきから笑う度に息が耳にかかるんですが!
え?なにこれ無意識セクハラ?

高鳴る心臓をごまかすため、私は大袈裟に声を上げた。


「あ!そ、そう、あのね!このゲーム、スクアーロ似のキャラも居るんだよ!」
「はあ?俺とかあ?」


案の定スクアーロは興味が沸いたようだ。
ホッと息をついて、プレイキャラを選択した。もちろん選んだのはレベルマスターなのにマトモに勝てたことのない憐れな金髪くん。

この子じゃないよー、と前置きをしてから、肝心の対戦キャラを選ぶ。


数秒後、バトルスタートと同時に武器を構えた金髪くんと敵の男。


「…おい、まさかコイツかあ?」
「そうだよ。似てない?銀髪長髪、黒コートに武器が刀」
「…容姿のポイントとしてはカブってるが…全体的にちげえだろ」


そんなことを言いながらスクアーロが身を乗り出してくるものだから、落ち着いたかに思われた私の心臓は再び早鐘を打ちはじめる。


ち か い!!!



「そもそもこいつ、何の話してんだあ?」
「そ、それはですね!この金髪くんと銀髪さんは宿敵同士で、深いながーい因縁が…」
「ふーん。それにしても長ぇ刀だな…俺ももっかい改造してみっかなあ…」


やばいやばいやばい

緊張するドキドキする!
ボタンが手汗でべたべたしてきた。もうホント勘弁して下さい。

さっきから息が首やら鎖骨やら耳やら、色んな意味で死にそうです私。このままだと私の可哀相なチキンハートが骨肉を押し退け飛び出てきそうだ(なんてグロテスクな!)


「だがまあ、これが俺だとしたら楽勝で俺の勝ちだなあ!」
「そそそそうですね!(早く負けろ私早く早く早く)」


一刻も早くバトルを終わらせようと、私は自滅的にボタンを押した。


ずさああああっどーん!



「……」
「…か、勝っちゃった…」


憐れなり、スクアーロ似の彼は金髪くんにボッロボロにされて敗北した。
画面には華やかな音楽と共にやたらクールな金髪くんが、

『興味ないね』

と言い去っていった。
私は静かに電源を切る。




…ま、いいか勝てたし。私の命の危機も去ったし!


ゲーム論議


ちなみにその後スクアーロはかなり凹んでいた。ごめんね!





091008

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