人気のない図書館で読書に勤しんでいたら本が飛んでいった。僕の手をすっぽーんとすり抜けたそれはマダムの後頭部にぼすんと鈍い音を立て着地した。怒号と共に僕は放り出された。


「スリザリンが減点されたらお前のせいだ」
「別にあたし寮杯とか狙ってないし」


尻餅をついたままの僕を彼女は満足げに見下ろした。お前が狙ってなくても他の皆が狙ってるんだ、協調性のないやつめ。(人に言えたものじゃないが。)


「…で、何の用だ」
「こんな天気のいい日に図書室でたったひとり読書に勤しむ引きこもりに日光浴させようと」
「余計なお世話だありがた迷惑だ早く帰れ」


埃のついたローブを叩きながら睨みつける。立ち上がった僕は彼女より頭一個分高かった。それが不満だと彼女は口を尖らせる。


「スニベルスに見下ろされるなんて屈辱的」
「僕に言わせればその発言が屈辱的だ。そもそも東洋人の君が西洋人しかも男子の僕より小さいのは当たり前だろ」
「くっそ、人種の壁め…」


彼女が悔しがっているようなので僕は少しいい気分になった。いくら転ばされようと立ち上がれば見下ろすことができるのだ、僕は。

おとなしくなった彼女をもう一度見下ろす。なんだ、黙っていれば可愛く見えないこともない。日本でいうヤマトナデシコ、ってやつだろうか?


機嫌の良い僕が口を開きかけた瞬間。


「…隙アリイィィ!!」



素早く伸ばされた脚が僕の膝裏に激突する。
咄嗟のことに避けるのもできず、気づけば僕はまた尻餅をついていた。


見上げれば、なんとも嬉しそうな顔の彼女が再び僕を見下ろしている。その笑みは悪魔か、はたまたどこぞのポルターガイストか。


「うーむ、達観、達観!やはりセブルスは見下ろすのが一番だよ!」
「……」


こいつのスリザリン気質は本物だと思った。


ワールドイズマイン

(あっそうそう、明日ホグズミードで買い物付き合ってね)
(…どうせ荷物持ちさせる気なんだろ)
(もちろん!)
090915

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