揺れる、揺れる。流れるような銀色。綺麗だなと思う。恐る恐る触れてみればさらり、指先を摺り抜けてゆく。シャンプーのコマーシャルみたいだ。まさに誰もが嫉妬する髪へ!ってやつ。このサラサラ感。どこの使ってるんだろう、ぼんやり考える私は毎日くせっ毛に悩まされている。この美しさはもう犯罪だよね。男の癖に。男女差別をするつもりは皆目ないけど、つまり世の中不平等だっていう話。


私に背を向けている無防備な二代目剣帝殿は、未だ夢の中。きっと向きを変えれば穏やかなその寝顔を目にすることができるだろう。今を逃したら二度と見れない訳でもないし、これからもそれが私の特権であり続ける予定なのでわざわざ覗き見ようとは思わない。第一腰が重い。痛い。加減しろ発情期の鮫め。


数年前は剣しか見てなかった、ていうか剣が恋人なんじゃね?とベルに称されたこの男とこうして朝を迎えるようになるなんて、世の中何が起こるかわからない。しかも酒の勢いで付き合い始めた私達がこんなに長続きするとはボスの超直感でも予想できなかったに違いない。
とにかくきっかけが何であろうと、現在私はスクアーロにべた惚れなのだ。きっとこれからも、この人と朝を迎える度にそう思うのだろう。

まどろむ思考はそこで止まり、私は再び瞼を閉じた。





上がっては下がり、下がっては上がる。規則正しく上下する胸にそっと手を置いた。別に盛ってるわけじゃねえ、セクハラとか言うな。情事後だろうと俺より早く起きるこいつの寝顔はレアだ。今のうちじっくり観察しておくとしよう。仕事柄死んでるのを確認することは多いが、生きてるのを確かめることなんて滅多にない。彼女の胸は静かに、休むことなく鼓動を打っている。少し視線を上げると鎖骨の辺りに昨夜の跡がしっかり付いていて、うっかり欲情した。しょうがねえだろお、男なんて所詮そんなもんだ。


強さだけをひたすら追い求めたあの頃の俺よ、ベッドで愛しい女の鼓動に耳を澄ます今の俺を何と言って笑うだろうか。お前将来剣と結婚すんだろ、とベルに言われたこの俺が、引き出しに入れたままの指輪を渡すタイミングに頭を抱えているなんて。


酔った勢いで告白したため細かい流れはお互いさっぱり覚えてない。一晩だけの関係で終わらなかったのは奇跡に近いだろう。結果として恋人同士に落ち着いた二人の関係が、彼女が目を覚ましたときに少し変わるといい。いくら相棒といえど、無機物と挙式は上げたくねえからなあ。

手探りで取り出した小箱を枕元に置くと、俺は再び瞼を下ろした。















090822
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