わたしの華麗なる休日のスケジュール。前の日ははやく寝て、カーテンからさし込む朝日で目をさまし おいしい朝ごはんを食べる。ふわふわのオムレツに焼きたてのパン、あったかいスープ。おやつはスコーン。ラズベリー ココア マーマレード いろんな味をたのしみながらジャスミンティーをひと口。たっぷり味わったあとわたしはにっこりほほ笑んで言うのだ。「スクアーロ、とってもおいしいよ!」わたし専属シェフはたいしたことねぇよなんて言って、でもちょっと得意げにわらうんだろう






走馬灯のように駆け巡ったわたしの休日スケジュールは、おでこを叩かれてあっさり消えた。睨みつけるべく視線をあげても逆につかれるばかりで、わたしの目はひらいては閉じてをくり返す。歩きながら寝れそう。隣でスクアーロが肩をささえてくれてなければこのまま倒れ込んでいたにちがいない。いっそ倒れさせてほしい。足はいたいし、屋敷はやたら静かだし、みんな寝入ってておかえりの一言もない。はやく寝るというファーストステップから転げ落ちてしまったのはけっしてわたしのせいじゃない。せっかくパパッと任務を終わらせたのに、帰りの車が森のなかでエンストするなんてだれが予測できただろう。ようやく屋敷にたどりついたころにはお日さまも沈んでいて、わたしは体も心もくったくただった。


「スクアーロ、つかれたよう」
「もう少しだから歩けぇ」
「これ以上歩いたらしぬ」
「安心しろぉ。てめぇはそんなにヤワじゃねぇ」


なんて言いつつスクアーロはわたしを軽々と担ぎあげてくれる。お姫さまだっこの方がいいなあ と調子にのってみるとさすがに怒られた。それでもしっかりと腰に回された腕に力強さを感じてわたしは幸せな気持ちになる。あ、そういえばわたしのコート、任務帰りだから血まみれのままだ。血ついちゃうよ、と言ったわたしにスクアーロは構わねぇと首を振った。それならいいや。わたしはスクアーロの肩にぎゅうと抱き着く。




部屋まで着くと、スクアーロは片足で乱暴にドアを開けてわたしをそっと下ろした。さっそくベッドにダイブしようとするのを首根っこをつかんで止められる。


「なーーにーー」
「ちゃんと着替えろぉ」
「えーーー」
「えーじゃねぇ」


しぶしぶベッドから離れる。お風呂は明日の朝でいいや。眠いし、湯舟につかってるうちにうたた寝して水没しかねない。コートをばさり放り投げてブラウスのボタンを外してゆくと、スクアーロの呆れた声が降ってきた。


「ここで着替える気かぁ?」
「うん」
「お前はもっと恥じらいっつうものを持て」
「いいでしょ、どうせ見慣れてるんだし」


大きなため息をつきながらわたしの脱いだものを拾い上げたスクアーロが、下着姿のわたしにパジャマをさしだす。着替え終わると今度はマグカップを渡された。中にはあったかいココア。わたしの大好物。ありがとうスクアーロ大好き!ゴクゴクと煽るように飲み干すわたしを見て、スクアーロが眉を下げてわらった。
体があたたまると眠気が最高潮に達して、よし寝るぞとベッドへ向かおうとすれば再び止められる。何かと見上げれば歯を磨け だって。お母さんか。めんどくさいなあと思いつつ、言うこと聞かないとスクアーロがうるさいのでしょうがなく洗面所に向かう。2本並んだ歯ブラシはわたしとスクアーロのもの。しゃこしゃこ磨いていると、スクアーロの顔が鏡に映った。わたしの脱いだ服を洗いにきたらしい。そんなの明日メイドさんに頼めばいいのに。


「そんふぁのあひたふぇいどさんにふぁのふぇばいひほに」
「何いってんのかわかんねぇ」


ペッしてもう一度くり返せば、血がついてるからお湯につけておくんだと言われた。その方がよごれが落ちやすいらしい。落ちなかったら捨てればいいじゃないか。ベルなんか任務のたびに新品卸してもらってるし。そう言おうと思ったけどやめた。スクアーロはそういうのが嫌いなのだ。ジャッポーネ的に言えば「もったいない」んだって。几帳面というか神経質というか、地球にやさしい男である。ちなみにゴミも分別する。今度からエコアーロと呼ぼう。みんなの前で。


これでようやく寝ることができる。バフンと音をたててベッドに沈み込むと、一日の疲れがドッとでてきた。風邪ひくぞぉ、と言いながらスクアーロがわたしの体を毛布で包むのを感じる。歯磨き粉のせいで口のなかがにがい。せっかく甘いココアを飲んだのに。文句を言うとスクアーロはちょっと考えるような仕種をして、それからわたしの唇に口づけた。ちゅっ かわいらしいリップ音をたててスクアーロの顔が離れていく。…やられた。


「…まだにがいんですけど」
「続きは明日なぁ」


あやすようにぽんぽんと頭を叩かれると、再び眠気がおそってきた。ねぇスクアーロ、わたし明日の朝はふわふわのオムレツが食べたい。おやつはスコーンがいいな。もちろんスクアーロお手製の。伝えたいのにもう口を開く気力もない。明日、スクアーロより早く起きれたら注文しておくことにしよう。きっと無理だろうけど。まあいいや オムレツじゃなくたって、スクアーロがつくる料理ならなんだっておいしいんだから。でもやっぱりスクアーロのスコーンは譲れないかな……


まぶたを閉じた瞬間、おやすみと一緒にもうひとつキスが降ってきた。




羊水のあのこ


空たかくのぼったお日さま。ふわふわのオムレツに焼きたてのパン、あったかいスープ。おやつはスコーン。ラズベリー ココア マーマレード。いろんな味をたのしみながらジャスミンティーをひと口。寝坊したのにこんなにおいしいの食べさせていいのって聞けば、スクアーロは今日だけだからなぁ、と得意げにわらった。


100922@ひまし油
猫目へ仲良し記念!
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