「あつい」
「言うなザックス、本当に暑くなるだろう」
「言わなくても暑いけどね」


あーつーいー…とさっきからそればかりのザックスがごろりと横になった。つられてわたしも寝転ぶと、これがなかなかヒンヤリして気持ちいい。ウータイから取り寄せたというこの敷物は、冷房のないこの部屋でかなり役立っていた。タタミ とかいったか。ザラザラした表面がわたしの好みだ。わたしの部屋にも入れてもらおうかな。でも戦争中だけあって、ウータイからの輸入品はどれも高価だ。安月給のわたしじゃあ0.5畳がいいところだろう。そもそもソルジャーの自室に冷房が入ってないのがおかしいと思う。


「まあアンジールの部屋に来ればいいや」
「お前はいい加減他人の部屋を冷房代わりにするのをやめろ」
「そーだぞ、人口密度高いとその分暑くなるんだからな」
「お前は俺の部屋に居座るのをやめろ」


なんだかんだ言って、アンジールはわたしたちを追い出したりはしない。やさしいなあ。
そのままごろごろしていると、ジェネシスがキッチンの方から姿を現した。その両手にはかき氷が抱えられている。このお坊ちゃまは料理はてんで出来ない代わりに、最近アンジールに教えてもらったかき氷を作るのにハマっている。作るといっても氷を機械で砕いてシロップをかけるだけの簡単な作業だ。本人は料理の達人になったような気でいるようで、わたしたちはしょっちゅうジェネシス式かき氷を食べさせられていた。おいしいからいいんだけど。


「イチゴとレモンとメロンソーダとそのまま、どれがいい」
「いや、そのままって何」
「シロップが途中で無くなった」
「お前、使いきったのか」
「あれだけ毎日作ればねー…」
「つうか何もかけないのはキツくね?」


どん、とテーブルに並べられた4つのかき氷を眺める。多分今のわたしたちの気持ちは100%シンクロしているに違いない。そのままだけは避けたい…!
沈黙を破ったのはやはりザックスだった。


「オレ、メロンソーダがいい」
「えっじゃあわたしイチゴ!イチゴたべたい」
「なら俺はレモンだな」


みんなそれぞれ好き勝手に器をとっていく。言わずもがな残ったのは何も掛かっていないそのままの氷。そしてアンジール。さっそく食べはじめるわたしたちを尻目に、アンジールはため息をついて残った器を引き寄せた。どこまでも大人の対応だ。さすかアンジール。
かき氷をスプーンで掬って口に含むと、イチゴの甘い香りが広がった。冷たい塊をシャリシャリかみ砕く。やっぱり暑い日にはかき氷だ。

わたしたちが静かにかき氷を味わっていると、ノックもせずドアが開いてセフィロスが入ってきた。ラザード主任と話し合いがあるとか言っていたけど、どうやら早めに終わったらしい。


「おいザックス、この前の任務のことだがな」
「俺の部屋にいることは前提なんだな」
「入り浸ってるもんね」
「なになに、なんかあった?」
「報告書に記入漏れが多すぎる。再提出だ」
「げええええええ」
「これで何度目だ?ザックスが再提出させられるのは」
「両手使っても数えきれないんじゃないか?」
「どんまー」
「めんどくせええええ」


唸りながらザックスがまた寝転んだ。すでに器はからっぽになっている。食べるの早いな!ちなみにアンジールも食べ終わっていた。ジェネシスはやたら上品に食べているせいでかき氷というかただのレモン水と化している。


「ところでお前ら、美味そうなものを食べているな」
「ジェネシス式かき氷だよー」
「ワンパターンだなお前も」
「美味いんだからいいだろう」


で、俺の分は?セフィロスの一言に部屋にいた全員が顔を見合わせた。そういえば4つしか持ってきてなかったね、ジェネシスお前もうひとつ作ってないの?、シロップが無くなったのに余計に作るはずないだろう。じゃあセフィロスの分は……


「ちょ、セフィロスごめんいじけないで タタミにのの字書かないで」
「書いていない。これは魔法陣だ」
「すげぇなセフィロス!魔法陣書けるなんてさすが英雄だな!」
「おいザックス傷口に塩を塗るな」
「でもそしたらマテリアはどうするんだ?いらないのか?」
「だめだこの子天然だよ」


本格的に拗ねてしまったセフィロス。ジェネシスは我関せずという顔でかき氷を食べ続けているし、ザックスは魔法陣について詳しく聞きたそうだ。最後の良心としてしょうがなく近寄る。


「ごめんねセフィロス。機嫌直して?」
「アイス」
「は?」
「俺はアイスが食いたい」


うわあこの大人……。尚もアイスと繰り返す神羅の英雄に相手をするのも面倒になったわたしは、彼から離れてジェネシスに近づいた。もう完全に液体になっているのに、相変わらず上品にスプーンで掬って飲んでいる。見ているこっちがじれったい。


「もうぬるくなってきたんじゃない?一気に飲んじゃえばいいのに」
「そんな下品な飲み方できるか」
「わたしが飲んであげよっか?」
「断る」


ちぇっ残念。そのままジェネシスがレモン水を飲む様子を観察していると、突然背中が重くなる。ぐぇっとカエルが潰れたような声が出た。


「俺を無視するな」
「ちょ、セフィロスおもい!つぶれる!ていうか暑苦しい!」
「かき氷を食ったんだからこのくらい平気だろう。俺はラザードと窓も冷房もない指令室で2人っきりなのを堪えてきたんだぞ。労れ」
「なんていう無茶苦茶な…アンジールーたーすーけーてー!セフィロスにつぶされるー!」


両手を伸ばして必死に助けを求める。アンジールは心底呆れたといった顔でわたしたちを眺め、立ち上がった。あれ?助けてくれないの?


「買ってくるからこれ以上俺の部屋の室温を上げないでくれ」
「へ?」
「アイスがいいんだろう。何がいい」
「ア、アンジール…!」


アンジールはやっぱりやさしかった。わたしたちのお父さん…いや、お母さんになれる。むしろお嫁に来てほしい。持つべきものはアンジールだ。


「じゃあオレハーゲンバニラ!」
「わたしハーゲンキャラメル」
「ハーゲン抹茶」
「白くま」
「よし全員ガリガリ君だな」



100517@酸素
宮白殿リク、FF7CCソルジャーズ夢でした。ふざけすぎた自覚はある。だが後悔はしてない。とりあえずソルジャー指令室に冷房はあると思います。遅れたけど誕生日おめ!
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