長い長い時間。実際にはそう長いわけでもなかったはずなのに、わたしにはひどく長く感じられました。世界は平和になったというのに、わたしの心はここしばらく波立っています。それが何なのか見極められないのがひどくもどかしく、機を折る手が何度も動きを止めました。あの頃のような胸騒ぎとは違う、心が落ち着かない感覚。なにかが起きる 漠然と思いました。わたしのそういった勘はいつも当たるのですが、当たるまではわからないのです。便利なのか、厄介なのか。

風が吹いていました。柔らかな風です。晴れた日にはぴったりのやさしい温度。窓へ目を向けると、森の木々が揺れ、小鳥たちが一斉に飛び立つのが見えました。首を傾げます。やがて木々の隙間から姿を現したその影に気づき、わたしは家を飛び出しました。






長い長い、道のりだった。何度膝をついただろう。何度歩みを止めただろう。それでも立ち上がり歩き出せたのは、共に戦う仲間がいたからだ。そして何より、たとえ記憶が戻らなくともずっと私を支えてくれた、あたたかな光。彼女が約束してくれた、消えることのない確かな力。光は、私と共にあるのだから。


駆け寄ってくる彼女をひどく愛おしく思った。記憶というのは彼女の言った通り、身体の奥深くに根を張っているのだろうと、心が満たされてゆくのを感じながら考えた。悩んでいたほんの少し前の自分に笑いが漏れる。帰るところは、初めから知っていた。









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