まっかな髪は血のいろのようであり心臓のいろのようであり揺らめくほのおのいろであった。レノの髪はあかい。生れつきなんだって。生れつきあんなあざやかな赤って、一体どういう遺伝子なんだろう。
対するあたしのパサパサの髪の毛はまっ黒け、レノとは大違い。いろいろ若気の至りでいじったり染めたりしたものだから、キューティクルもすっかりいじけてしまった。そういえばタークスのみんなって髪きれいじゃない?ツォンさんはサラッサラなのか見てとれるし、イリーナの金色も手入れが行き届いているにちがいない。ルードは…まあ、うん。


そこまで考えてなんだか悔しくなってきた。まあそういうことで


「染めてみました〜」


ジャーン!とかぶせていたバスタオルを放りあげれば、青いグラデーションのかかったレノが絶望的な顔をしていた。うん これなかなか似合ってるんじゃないかな。我ながらセンスいい。


「染めてみました〜じゃねぇだろ、と。キレるぞ」
「なによ、文句あるの?」
「あるに決まってるだろ。なんで俺のビューティフルレッドヘアーが突如青くなってんだよ」
「イメチェン」
「殴るぞ」
どうやらタークスの浪速のエース様はこのいろにご不満なようだ。似合ってるのになぁ。ていうか自分でビューティフルとか言うなよ。
レノは自分の赤い毛が気にいってるらしくて、今まで染めたことがない。(不良のくせに。)イメチェンなんて拒否するに決まってるから、今回は少し強引に作戦を強行してみたわけで。(具体的にいうとさりげなく催眠薬入りのコーヒーをレノに飲ませ、ロッドくんと共謀してリフレッシュルームまで運び、寝ている間に近所の薬局で買った青のブリーチを使用した)(ちなみにロッドくんは終始超ノリノリだった。こいつどれだけ後輩に恨まれてるんだ)


「別に青くたっていいじゃん。なんかこう…色違いみたいな」
「ヤダ」


子供か。どっちにしろすぐ戻す気は毛ほどもないので、スーツのポケットからケータイを取り出す。カメラを起動させてレノに向けると案の定死ぬほど嫌そうな顔をした。問答無用!とばかりにシャッターを切る。


「お、おい、マジで撮ったのかよ、と」
「わたしはいつだってマジですともふはは」
「消せ!いますぐ消せ!」
「ヤダー」


迷わず保存してケータイを閉じると、レノが飛びついてきた。わたしの手からケータイを取り上げようとする。とっさに後ろ手に隠しレノから離れようとするけど、レノはスーツの裾を掴んで体ごと引っ張った。ぶちん。あー嫌な音した…これボタン取れたかな…。あとでルードに繕ってもらおう…。頭の隅で考えていると、さっきまでレノが座っていた椅子が足首に引っ掛かった。あ、やば、と思う間もなく体が前のめりに崩れる。
ドサアアア…と大きな音をたてて、わたしとレノが床に倒れ込んだ。


「いったあ……」
「っーー…」


薄く目を開けると、レノのスーツの胸元がちょうど目の前にあった。わたしの体がレノに覆いかぶさったような状態だ。あらためて見下ろすと、青いレノはなかなかカッコイイ。クールっぽいし、普段よりか頭が良く真面目に見える。いつもこれだったら、そのうち中身も矯正されるんじゃないだろうか。もしそうなったらツォンさんに限らずタークスのみんなから感謝されるだろうな。わたしが英雄として奉られる日も近い。


「おい、いつまで人に乗っかってガン見するつもりだ、と」
「あ、ごめん。つい」


慌てて退けようとしたら、ぐい、と腕を引っ張られる。そのままごろりと体が転がって、気づけば視界が反転していた。今度はわたしに覆いかぶさったレノが不敵に笑う。うわあ、嫌な予感。


「散々好き勝手してくれたなぁ?」
「え、いや、あはは…」
「俺様のチャームポイントを台なしにした罪は重いぞ、と」
「い、今のも似合ってるよ?」
「そうか、それならお前も青く染めてやんなきゃな。少しは頭良く見えるかもしんねぇぞ、と」


同じこと考えてたよ……
結局わたしはタークスの英雄にはなれず、それから一週間レノとお揃いの青い髪で出社しなければならなかったのだった。




100517
某イラストサイトで見た青レノに感化されて。まあレノは赤が1番だよねっていう
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -